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ミシェル・オバマ夫人 -黒人版ヒラリー-

 久しぶりに政治のおはなし。
 次回のアメリカ大統領選挙は2008年11月の予定です。今までの例で言えば、今年秋くらいからが本格的選挙戦といわれていたのですが、先日テレビで民主党の大統領候補たちが討論会をしていました。
 ゴリ丸はそこで初めてバラク・オバマ候補、つまり黒人(正しくは白人と黒人の混血)初の大統領誕生かと言われている御仁を見たのです。
 ところが、鋭い質問にややしどろもどろな点が見られ、隣でいかなる質問にも堂々と答えていたヒラリー・クリントンと対照的に映ってしまいました。
 ヒラリーは言うまでもなく、第42代大統領ビル・クリントンの妻ですが、ではオバマ候補の奥さんはどんな人でしょう? Googleで検索しても奥さんについては日本語では1件しかヒットしませんでした。日本では注目されていないんですね。外国語を含めると約47万件。
 彼女の人となりを評したドイツの大手新聞『ディ・ヴェルト』4日付電子版の記事 "Michelle Obama - die schwarze Hillary"『ミシェル・オバマ 黒人版ヒラリー』(記事原文はこちら)を訳します。ドイツの新聞は新大統領候補の奥さんをどう見ているのでしょうか?

《翻訳開始》
(注:以下の翻訳文は管理人の承諾なく一部ないし全部の転載を禁じます)
 ミシェル・オバマは声が大きく、成功を収めた人だ。民主党上院議員の妻であり、大統領候補の妻である彼女は、信頼を得ようとしている。しかし、それはバラク・オバマ氏には危険になる恐れがあるかも知れない。

 父親なしで育ったバラク・オバマ上院議員は、強い女性たちのお陰で、教育、善に対する信念、穏やかでいられる類まれな天賦の才を身につけた。彼は自身の政治的自伝「勇敢なる希望」を育ててくれた2人の白人女性に捧げている。「母方の祖母で、わたしの人生においてゆるぎない大きな存在だったトゥトゥ。そして愛情豊かな心が、今でも私を助けてくれる母です」3番目にくるのは妻だが、彼は謝辞の冒頭でひれ伏してしまう。彼女の助けがあってこそ、いろいろな考えに至ることができたと言うのだ。自分の人生にミシェルがいることにいかに感謝しているかが、毎日毎日よりわかるようになると言う。しかし、彼女にはお世辞も誓いも口にすることができると思われるのだ。「まあ、くだらないことを言ってないで、この娘たちをベットに連れて行ってよ」

プリンストンハーバードを卒業
 ミシェル・オバマは2008年11月、アメリカ初の白人と黒人の混血の大統領の、初の黒人ファーストレディーになるかも知れない。だが、その可能性は、際立った自意識を持った女性のために途絶えるのかも知れない。43才のミシェルがプリンストンで学び、ハーバードで法学者になったのは本当だ。彼女は、5才と8才になるナターシャとマリアが生まれてからも常に働いていて、ずっと前からオバマ氏よりも収入が良かった。政治に興味を持つようになれば、彼女はいかなる点でもオバマ氏を上回るだろう。大統領選について、5月末のあるテレビインタビューで次のように答えている。「私たちがどうなるのか、非現実的な将来の姿を描きたくないので、結果が出なかったときには、私たちは騙されたと結局は感じることになるでしょう。私たちはあるがままでしかありません。私は声の大きいおしゃべりで、夫を引っ張り上げていきます。彼は信じられないくらい頭がよく、強い女性と付き合っている状態を非常に心地良く思う人です。私をどうにかするというのが、彼が大統領に立候補した理由の一つなんです」

子どもの教育はするが、いつも台所に立つのはいや
 大統領候補の夫人たちにとって、これは言い古されたやさしい女性向けの政策のレトリックそのものではない。キャリア女性であるミシェルの冷徹さは、15年前に、自分の幸せは家でビスケットを焼くことではないと言明したヒラリー・クリントンを思わせる。夫が現在、民主党から指名を受ける戦いにおいて、誰でも知っている、強さが弱さでもある女性に勝たなければならないというのは、そこここにあるような話ではない。
 ミシェル・オバマ自身は、大好きな調理法を尋ねる(ばかげた)質問に答える際、子どもの教育と違って、料理はあまり自分がすることではないことを認めざるを得なかった。しらばっくれることはできないし、そうしたくもないという。エチケットなど押し付けられるのはいやだし、リベラルだとも、進歩的だとかフェミニストだとか呼ばれるのも彼女は嫌だ。彼女が付け加えたように、たとえフェミニズム的な目標の大部分に賛成だったとしても、である。夫が立候補しなかった場合、ヒラリー・クリントンに1票を投じるかという質問にも危なげなく答えた。「いい質問ですね」と答えてから、彼女は熟考するように黙った。「大事なのは、最良の大統領になる人を見つけることです。それが女性だったとしたら、素晴しいことだと思いますよ」ミシェル・オバマはうっかりして馬鹿な答えをするような人ではない。むしろ、誤った時に、確信を持って、率直に、大声で何か夫にダメージとなるようなことを発言するかも知れない。大統領候補の妻は、エレノア・ルーズベルトやジャッキー・ケネディ以来、重要な役割、すなわち常に新しいものを考え出す役割を担っている。オバマ氏にとって、ヒラリーにとってのビル・クリントンに相当するミシェルは、夫のアドバイザーとしては、大きな影響力を持っているだけに止まらない。2組の「パワー・カップル」。白人と黒人。エール大卒とハーバード大卒。片や15才若く、かなり経験不足で、もう片方は経験豊富過ぎるくらいかも知れない。両方とも法律家。これはおもしろくなるだろう。

本当は夫を必要としない女性
 ミシェル・オバマが部屋に入ってきたら、無視できる人はいないだろう。身長はほぼ1メートル80センチ(ヒールを履くと、夫とほぼ同じ身長)。毎日鍛え上げた肉体(彼女の娘のバレエ教室で彼女が入っている縄跳び教室は伝説になっている)。肩幅は広く、その活発さといったら、ほとんど強烈なほどだ。厳格な性格で、「私にかかってくるのなんかおよしなさいよ」といわんばかりの口元で、目には情熱あふれる知性が光る。シカゴ南部の小市民の出であることから、彼女は自信に溢れているが、鎧の下には優しい心を持っている。彼女はきつい仕事、家族、信仰、そして自分自身を信じている。彼女は女性を必要とする男性を必要とはしない女性だ。結婚前にはミシェル・ロビンソンといった彼女は、1988年にハーバードを卒業すると、シカゴのシドリー・アンド・オースチン法律事務所で働いた。珍しい名前だったので、夏学期の聴講生になれたからだ。ミシェルより2才年上のバラク・オバマは、早くから彼女に気に入られようとしていたが、なかなかうまくいかなかった。彼女には他にすることがあったし、それは事務所にはふさわしいものではなかった。地方政治家のオバマが、彼女の育ったサウスサイドの黒人たちから信頼を得たことがわかって、彼女はようやく態度を軟化させた。「人々は、彼が言ったことに、何か確信に満ちたもの、本当のものを見て取るようになったのです。それは私にも同じようにそうでした」
 彼女はオバマ氏という男性にほれ込む前に、この政治演説家にほれ込んだようだ。「勇敢なる希望」で、初めてキスした時に彼女の唇がチョコレートの味がしたと夫は書いている。われわれが間違っていなかったり、彼が事前に準備を調えていたとすれば、彼の口はたばこの煙の味がしたに違いない。喫煙は彼の悪習だ。彼女は猛反対だが、彼女の両親が喫煙していたために、娘のマリアがぜんそくにかかったからというのも理由だ。ミシェルによると、バラクは娘たちや彼女の前では決してタバコを吸わないという。彼の立候補を支持するにあたり、彼女は禁煙を条件にした。「私としては、これは模範を示すためのものです」と彼女は言う。「愛煙家か大統領か、どちらかにはなれる」皮肉のお陰で彼は救われた。彼女に嘲笑されることもなかったし、自身が思い上がることもなかった。支持者たちは彼を大いに支持してくれるが、「でも、奥さんはねえ? すごいよね!」と幾度となく告白されたと彼は著書に書いている。彼はうなずくだけで、ある公職を巡ってミシェルと選挙戦を戦わなくてもいいことに感謝しているという。「彼女はそう苦戦せずに私を負かすでしょう」それでも、そうではないのだ。「彼女は質問する人にはこう答えるんですよ、政界に進出する気はないってね。そして、彼女はいつも通り、真実を答えているんです」

ミシェルがバラクの演説を手直し
 オバマ上院議員は、連邦議会に立候補したときに、ミシェルと子どもたちが無視したような辛い時期のことも黙ってはいない。ミシェルはリチャード・デイリー市長陣営で、うまくスタートを切り、選挙に勝って役人が交代するときに指導的な役割を引き継ぎ、遂には年収275,000ドルまで達したが、自分のキャリアと主婦、母としての幸せを取り替える気はなかった。「子どもたちを夫の協力なしで育てなくちゃいけないなんて、考えたこともありませんでした」とミシェルはバラクとひどくけんかしたことを引き合いに出した。シングルマザーは黒人家庭ではほとんどお決まりだったが、それゆえに、教育を受け、成功しているミシェルのような女性としては、それだけ大きな非難を浴びることになる。バラクは理解し、しばらくの間はいつもよりも多くおしめを取替え、夜中じゅう起きてミルクを与えた。彼は結婚生活を守ったのだ。今でも上院議員であり大統領候補であるバラクに電話がかかってきて、帰りに何か買って返って欲しいといわれる。ミルクや、例えばアリ取り器だ。「私は受話器を置き、テッド・ケネディやジョン・マケインも家に帰る途中でアリ取り器を買うのだろうかと自問します」
 夫としてのバラク・オバマについて、彼女の口からはほぼはっきりと語られる。「米国民は私がすでに知っていること、つまり彼は生まれつき人を導く桁外れの男だと思い始めています」そして、たいていはこう付け加える。「それでも、とどのつまりは彼も一人の男に過ぎないんですが」これは笑いを生み、批評家の興味を引き、彼の選挙戦の見込みが良くなればなるほどさらに興味を引くパトスを和らげるのだ。ミシェル・オバマは夫の重要な演説には手を加え、彼の考え自体を検証する。再び黒人社会から、ケニア人とカンザス出身の白人女性の息子であるオバマは十分には黒人たり得ないというひそひそ声が湧き起こると、ミシェルは恐れずに個人を攻撃する。「私も大人になる過程で言われたことがあります。『お前は白人の女の子のような口をきくね』って。この原動力を理解しない黒人はいません。この議論は、黒人を巡って、この国で今でも感じられるもので、オバマは他の誰よりもそれをわかっています」しかし、彼女はさらに続けて、夫の選挙戦が、黒人であるという経験から別のイメージを示すことができればと思っているという。

労組は利益対立を批判
 言うまでもなく、オバマ陣営は孤立しつつある米国の黒人エリート層を代表している。ミシェルはそこから、教育、貧困との戦い、国民全体の疾病保険など、米国の大きな社会政治的諸問題がなおざりにされていることに対する怒りを生み出す。テロの問題は間違いなく非常に重要だし、イラク戦勝終結もそうだ。これに対してはすでに2002年に(当時はまだ上院議員ではなく、イリノイ州の地方議員として)オバマ氏が、これ以上はいかなる進歩も国家安全保障の犠牲にされてはならないと声を上げていた。「不安を掻き立てる人たちによって、われわれは無に帰してしまった。そうしなければテロリストたちに攻撃されると信じるがゆえに、ほとんど自分たちの利益に反対している状態だ」これまでのところ、オバマ陣営に懐疑的であったり、これを批判する人たちはもっぱらシカゴの人たちで、彼らのやり方は普通の選挙戦からするとずば抜けたものだ。彼らは、この夫婦が(著書に対する前払い金で)2005年に100万ドル以上を稼ぎ、この一家がシカゴに住んでいることがしゃくに障るのだ。オバマ上院議員は火曜から木曜までしかワシントンにいない。また、イリノイで、そして今はワシントンでイリノイのためにバラク・オバマが成し遂げた素晴しい政治的キャリアのお陰で、妻の収入がすごく増えたのではないかと疑問の目が向けられている。労組運動家の中には、このパワーカップル間の利益対立に不満を漏らすものもいる。しかし、今後起きることに比べれば、これはどれもつまらないことだ。

ミシェルがこれから学ぶこと
 すでにコラムニストのモウリーン・ドゥードによる強烈な記事が「ニューヨークタイムズ」に4月末に出て、むしろ熱気を煽っていた。優れた議論家であるドゥードは、ブッシュ政権、ヒラリー・クリントンのいずれをも同じように激しく軽蔑していた。ミシェル・オバマも同様に見られていた。なぜだろうか? あまりに傲慢に、あまりに生意気に彼女が旦那のことを普通の男だと語っているからだという。彼は一度たりともバターを冷蔵庫に入れたことがなく、5才の子どもは自分よりもじょうずに夫のベッドメイクをする。「私と一緒に住んで、ほんのちょっと印象が薄い」タイプの男性とのあらゆるおふざけが、下手な冗談となってモウリーン・ドゥードの神経に障るのだ。どうやってミシェル・オバマが信仰するようになったのかを自問したので、米国民は彼女の夫は神だと考えたのだ。この二人の女性が本当に似ていると思われることを別にすれば、本当の部分もある。バラク・オバマを腕白小僧として解説すると、彼は天才だと思うという不遜さを隠してしまう。しかし、夫婦間でふざけるのは選挙民には滅多に役に立たない。ミシェル・オバマはこれからそれを知ることになろう。
《翻訳終了》

【ゴリ丸の感想】
 ヒラリー・クリントン。夫が元大統領で、妻が現役上院議員にして次期大統領候補というのは史上初です。
 そのヒラリーとは質が異なりますが、またまた強烈なご夫人が登場したというわけで、ドイツの『ディ・ヴェルト』は「黒人版ヒラリー」なんて過激な副題をつけたわけです。
 貧困にあえぐ黒人もたくさんいますが、優秀な黒人も数多くいます。混血のオバマ氏はその中でも米国史上初の黒人系大統領になる可能性があるわけです。彼がここまで到達できたのはなぜか。もちろん彼の優秀さも理由でしょうし、背景として「時代」も挙げないわけには行きません。
 ですが、この「肝っ玉かあさん」なしにはオバマ氏を語ることはできそうにありません。『ディ・ヴェルト』紙同様に、米国大統領選挙に注目して行きたいと思います。

この稿おわり

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