FC2ブログ
 

鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

東京で安いものはお年寄りに聞け

欧米とアジアでは都市の作り方が違います。
ヨーロッパでは教会が街の中心。すぐそばには役所と市場が立ちます。市場は大概は露店ですね。周辺で作られた野菜や加工品が並びます。例えばドイツでは市役所の地下に市直営のRatskeller 「ラーツケラー」、つまり「市役所地下食堂」があるケースがあります。手ごろな値段で地元のワインやビールと食事を楽しむことができます。
アメリカは新しい国ですから、大都市は計画的に都市開発がされていて、(ニューヨークもそうですが)高級ブランドショップが並ぶ通り、オフィス街、ヒスパニック系、中国系、韓国系の人たちが住む地区はそれぞれはっきりと分かれているケースが多いです。中華街も決して町の中心にはありません。ちょっと中心からはずれたダウンタウンにあります。ダウンタウンは結構危険なところが多く、観光客にはお薦めしません。(けれど、そういう街が面白いのも確かですがね・・・)
さて、そんな欧米人が日本の下町を見たらどう思うのでしょうか?ここ最近の日本観光ブーム、日本文化ブーム、日本食ブームを見ていると、いわゆるエスニック、異文化に対する興味であることには違いないのですが、決して寿司、天ぷら、しゃぶしゃぶを食して、芸者ショーを楽しみ、京都とスカイツリーを見て終わり、といった古典的なパターンから、非常に多様化したツーリズムが浸透しつつあるように思います。
今日はそんな、彼らの興味の対象に生まれてきた変化を表す記事を『ニューヨークタイムス』から。"In Tokyo, Following Elders to Bargains" 「東京で安いものはお年寄りに聞け」をご紹介します。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
東京で観光客の圧倒的支持を受けているもののひとつに原宿がある。流行しか考えていない10代の子たちが、有名な突拍子もないファッションでぞろぞろとウィンドーショッピングしている迷路のようなショッピング街だ。原宿には若者向けのキラキラした輝きとしゃれた雰囲気があるが、東京を歩き回ると日本が高齢者の国だということがわかる。白髪のおじいさんたちが、渋滞にフンといった態度を示しながら自転車でシャーッと通り過ぎる。きちんと髪を整えた老婦人たちも同様で、お化粧して口紅も塗って、花柄のブラウスはきちんとアイロンがかかっている。
2週間前、わたしはガンガン鳴り響く音楽とブリーチした金髪の原宿の面々、そして値の張るお店を避けて、より騒々しくない、昔ながらの対極の街に出かけた。そこは巣鴨。おばあちゃんの原宿として知られている、原宿から山手線で北に30分行ったところだ。巣鴨はそれ自体、とんでもない格好の若者ではなく、お年寄り向けの地蔵通りという長い商店街で知られている。しかも、一番大事な予算について言えば、仏教のお寺と昔風のお店、カフェとベーカリーが混然一体としているこの商店街では、値段が手ごろだ。この地区には年金生活者が増えているので、当然だ。
もちろん、巣鴨には安い物ばかりというわけではない。戦後日本の文化と伝統を今でも彷彿とさせ、そうした時代の流れがかもし出すレトロで格好いいところが魅力的だ。地蔵通り商店街の入口にある、来訪者を迎える華やかなアーチの下で、歩道にいる尼僧が手をひらひらさせて一人の老女の痛みを取り除こうとしているのに出くわした。商店街の真ん中には、たいへん人気がある高岩寺があり、参拝者たちがとげぬき地蔵の小さなお像に押し寄せている。この像を小さなタオルでぬぐって、そのタオルを自分が痛い箇所に押し付けると痛みがなくなると信じられている宗教的な儀式だ。(週末には人混みでお地蔵さんが見えないくらいだ)お寺の周りに線香の香りが漂い、その独特な雰囲気も癒しに役立っている。線香の煙がたなびく中で信者たちが水をかけ、お祈りするときに50円玉を賽銭箱に入れるのが見えた。
お地蔵さんにお参りしなかったとしても心配ご無用。商店街では、隣の店の幸福の赤い下着の表示の文字もファッショナブルに見える。あらゆるスタイルやパターンの明るい色の服と、それに組み合わせる、だいたい一組500円(約4ドル45セント。1ドルは112.28円)くらいのアクセサリーが売られているお店もある。日本では60才になって十二支を5回迎えるとお祝いに赤い服を買う習慣が昔からある。還暦とは「暦に戻る」意味があり、儀式は輪廻、つまり二度目の誕生と考えられている。わたしは最初の誕生を祝い、若い二人の息子たちに、彼らが好きな(そして干支から)猿と牛の刺繍がしてある小さな赤いタオルを1枚当たり420円で買った。
もうひとつわたしのお気に入りの店は布遊舎という美しい手芸品店だ。ここは、テーブルランナーから着物、バッグから小さな人形やおもちゃに至るまであらゆるものに使われる300年前からの織の技術、ちりめんの専門店だ。わたしは細かい花柄の小銭入れを700円で、腕の長さ程で、魚が泳ぐ穏やかな海の柄の見事な手ぬぐい(多目的な和風の木綿の布)を1,080円で買った。
魚と言えば本当に驚くべきで、決して逃してはならない巣鴨での体験とは、たくさんの乾物の露店街に飛び込むことだ。照明があたっている蟹と小さな海老、ひものような山クラゲの山、繊維質でレタスに似たパリパリの干した葉野菜、紫がかった海藻の束。また、玄米茶(炒った大麦茶)、抹茶(粉状の緑茶)を売っている露店もある。どの売り子も笑みを浮かべて気前よく試食を勧める。わたしは全部ではないが、ほとんどを試してみた。ラップで包まれた入れ物にきちんと並べられている、すっぽんとマムシの標本のような乾物も試した。
小腹が空いてきたときに、年老いた魚屋が美味しいちりめんじゃこだかめざしだかを出してくれた。おばあさんたちのところを過ぎて、彼の同僚の女性のところまではすぐだった。彼女は枡に大盛りのちりめんじゃこ、干し野菜、胡麻という、ご飯に最高のお供を500円で売ってくれた。
カフェイン入りの飲料にはちょうどよい時間となったので、素敵な古いネオンサインと1950年代をほうふつとさせる狭い階段のある昔ながらの喫茶店を探した。喫茶店とは「茶室」の意味だが、ほとんどの場合はスイーツ、サンドウィッチ、軽食を出すコーヒーハウスのことも指す。(東京は最近コーヒーが爆発的な人気だ。ブルーボトルコーヒーの創立者は伝統的な日本茶とコーヒーを淹れる儀式にヒントを得て、ベイエリアのはずれに21日に出店する予定だ)
巣鴨の商店街の北西に行くと、かわいらしい小さな、コーヒーとスイーツのお店が路面電車の庚申塚駅のプラットフォームにある。そのカフェは、ビンテージものの路面電車が通り過ぎるのが目の前に見える、一服亭という名前のお店だ。名物は、季節替わりのもちの周りを小豆のペーストで被ったおはぎだ。
中に入ると、春緑の色をした壁と木目調のテーブルが気持ちよく迎えてくれて、女店員が奥の方の静かなテーブルに案内してくれた。白髪に三角巾をまいたコーヒーを淹れてくれる人がコーヒーはホットかアイスかとわたしに尋ねた。5分後、彼女は黒と朱に塗られたお盆にアイスコーヒーの背の高いグラスを運んできた。そのアイスコーヒーの氷のキューブはコーヒーで作ってあるので、氷が溶けても薄くならない。それとおはぎの乗った手づくり陶器のお皿とちっちゃなガラス製のエバミルクが入ったピッチャーの隣りにはかわいく置かれたお箸が乗っていた。すぐ後で、試してみるようにと一杯の緑茶を持って来てくれた。
彼女の行き届いた心遣いに感動した。しかも値段にビックリだ。おはぎのセットが320円、コーヒーをつけても620円だ。眼鏡をかけた男性がお店の反対側の隅にいるのに気付いた。彼はお茶とおはぎの上に新聞を広げてくつろいで読んでいた。路面電車がゴーゴーと通り過ぎ、わたしはこの昔ながらのリズムに聞きほれていた。一瞬、わたしには、自分が毎日コーヒーとおしゃべりを楽しみにここに来て、狭い横町を通って家路につき、途中でパン屋さんと魚屋さんに挨拶する姿を見たような気がした。もしこれが巣鴨で年齢を重ねる仕方であれば、もう数十年後にはここでわたしを見かけるかもしれない。
<終了>

【ゴリ丸の独り言】
文中で『巣鴨には安い物ばかりというわけではない。』という一文がありますが、一貫して感じられるのは、安い価格で日本の日常の姿を体験できる巣鴨に対する賛辞です。
ファミリーイン西向という外国人観光客に絶対的支持を受けているホテルが東京・豊島区にあります。最寄駅は要町か椎名町。これ、地方の方ではわかりませんよね。つまり、大きなターミナル駅には全然近くないのです。大手チェーンの大ホテルや便利なシティホテル、ビジネスホテルの対極にあります。それでも外国人観光客に支持を得ている理由は、スタッフの対応に尽きるそうです。(テレビで見て、サイトで確認しただけなので、実地検分していませんが・・・)
「日本の食事を楽しみたい」とお客が言えば、スタッフが近所のおでん屋さんに案内して、メニューの説明まで英語でしてくれます。「日本の伝統文化に触れてみたい」と言えば、町のお祭りに案内してくれます。
このように、外国人観光客だからといって、必ずしも名所旧跡を回りたい、高額を支払ってでも名店で天ぷらを食べたい、日本人でも一部しか楽しまない芸者ショーを楽しみたいとは思っていないのです。日本のごく普通の生活、食、文化に触れてみたい・・・そんな欲求が増していることがこの記事からもうかがい知られます。
いいことですよね。海外旅行に行く僕たちだってそうじゃないですか。外国人観光客だらけのムーランルージュ(パリ)や自由の女神(アメリカ)、ブランデンブルグ門(ドイツ)に行っても、まあとりあえず有名どころを抑えたなっていう感触しかありません。できれば町の小さな(それなりに混んでいる)レストランで地元の名物料理を食べてみたいじゃないですか。
今後の、日本旅行のあり方が現在進行形で変化しつつあるひとつの証拠だと思います。
~この稿おわり~

スポンサーサイト

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 

トラックバック

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。