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安倍自民党の大勝を『ウォールストリートジャーナル』はどう伝えたか?

総選挙での安倍自民党の大勝を外国メディアがどう伝えたのか、今日は第2回です。『ウォールストリートジャーナル』から、"Japanese Prime Minister Must Decide How to Spend Fresh Political Capital" 「安倍首相は次の章をどう描くかを今決めなければならない」をご紹介します。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
安倍晋三は14日に行われた彼の3回目の総選挙で地滑り的勝利をおさめ、彼の世代としてはもっとも傑出した政治家のひとりとして、また、有権者が不安を持っているような世界では並外れて成功した民主主義的指導者のひとりとしての地位を固めた。
今や安倍首相は厳しい局面に対峙している。具体的な公約を避けた選挙戦を終えた新たな任期にどのように政局運営するかを決めなくてはならない。
最初に問題となるのは、安倍首相が公約通りに経済構造改革を加速するかどうかだろう。これまでのところ、日本の閉塞した労働市場の刷新や農産物関税の撤廃など、外国が一番期待している見直しのいくつかについて彼は言及していない。
また、7月に表明した戦後の平和憲法の再解釈の決断を経て、アベノミクスを用いて日本の軍備を積極的に拡張するのかどうかも決断しなければならない。国会は来年新しい防衛政策にかなりな時間を割くだろうが、これまでにも増して自公政権はより大きな抵抗を受けることになりそうだ。
次に、来年第2次世界大戦終戦70周年記念を迎えようとしている国家として、60才の安倍首相が、さらなる謝罪を求めている近隣諸国からの要求と、日本が果たした役割に関するコンセンサスヒストリーを書き換えようという彼の開き直った決心とをどうやって両立させようというのかという問題だ。彼は中国、韓国との関係改善を最優先にしてきたが、過去の日本に対する賛辞を減らそうという兆しはない。
必ずしも事前に予測できたことではなかったとしても、安倍首相の2年間の任期中に、日本はほとんど失われた10年間を切り抜け、世界市場と外交において改めて重要な役割を果たすようになった。
アメリカ政府は、最も顕著なものとしてはTPPに見られるように、国内に反対派が多い経済政策が遅々としていることに何度も不満を持ったし、時に緊張する日本と近隣諸国との関係に神経をとがらせ続けていた。しかし全体として言えば、アメリカのアジアに対する影響力を維持するために不可欠な同盟関係に対して安倍首相が並々ならぬ安定したリーダーシップを行使したことにアメリカ政府は満足していた。
14日の総選挙に勝利したことは、こうした安定が十分でないような国においては特筆すべき政治的結果だったのだ。
安倍首相は過去25年間で17番目の日本の首相だ。この間、3年以上政権についていたのは小泉純一郎ただひとりだ。ほとんどは選挙で敗北したり、スキャンダルや党内の政敵への対処を誤って任期を満了せずに辞任した。政治的空白が生じ、最も良い結果としては官僚制による統治が行き渡り、最悪の結果としては国の行く末が危うくなった。日本経済と市場、日米同盟、そして日本の国際的立場に悪影響が出た。
安倍首相は選挙で結果を出し、こうした亡霊の多くを取り除いたかに見える。幸運は突然変わってしまうものだが、現時点では2016年半ばまでは安泰だと思われる。
ほぼ選挙終了と同時に、日本のメディアは安倍自民党が衆議院の475議席のうちほぼ300議席を獲得したようだと報じた。連立相手からの支援を受けた安倍首相は衆議院で「安定過半数」である3分の2を獲得し、2012年に彼が政権に着いた際に獲得した安定多数と同じくらいの議席を得る見込みだ。
2013年の参議院選でも同様に大勝したため、自民党は両院を思いのままに動かすことができるようになった。安倍首相はたぶん2016年夏の参議院選までは再び有権者に対峙することがない。次の衆議院選は2018年12月までは行われないだろう。
先進諸国の中では、長期政権を保ち続け依然として人気があるドイツのアンゲラ・メルケルを除けば、安倍首相は世界と比較しても素晴らしい成果を遂げている。アメリカではバラク・オバマ大統領に対抗する共和党が11月に下院の過半数を獲得した。最近の世論調査ではカナダのスティーブン・ハーパー首相は2015年の選挙で苦戦するという結果が出ている。フランスのフランソワーズ・オランド大統領の支持率は12%に落ちた。長期にわたって安定していたスウェーデン政府は今月議会を解散し、来年初頭に選挙が行われる。
安倍首相を批判する人たちは、特に個人的には人気が減退しているのにもかかわらず選挙に大勝し、たぶん戦後最低の投票率だったにもかかわらず大勝したことが誇張されたために、チェックを受けずに彼が権力を持っているのは危険だとすでに警告している。マスコミの批判に対する安倍首相の攻撃は大きく取り上げられ、さらに特定秘密保護法が施行されたために懸念が増幅している。
しかし、いまのところ、エコノミストたちや日本に関する専門家たちについて言えば、実行し過ぎる指導者には懸念を持たないが、実行が少なすぎる指導者には懸念を持つ。
安倍首相は第1次政権において、とりわけアベノミクスが長期的に成功するためには不可欠な経済構造改革など、主要なイニシアチブを行使するために圧倒的過半数を動員したことはほとんどなかった。彼は、世論調査で支持率が下がる兆しがあったり、公明党から抵抗が示された場合には引き下がる傾向を示した。
来年に予定されていた消費税増税を延期するという最近の大きな決断から、安倍首相は強力な利益を覆すために自らの権威を行使できることがわかっている。延期は財務省の強力な反対を押し切ったものだった。
11月に衆議院を解散する前、安倍首相が国会に最優先で提出した経済改革法案には、企業がより柔軟に派遣労働者を雇用できるようにする法案のように控えめな施策から、大企業及び中規模企業に女性を登用する努力義務を求める施策に至るまでが含まれていた。総選挙後の経済政策のアジェンダについて最近「エコノミスト」からインタビューを受けた際、安倍首相は新たに「eレセプトシステム」を立ち上げることによって医療費をより効果的にする案に言及した。彼は自分のビジョンをよりよく明示することを選挙戦においてはほとんどしてこなかったのだ。
安倍首相が基本政策を曖昧にしておく様は、彼の指導者である小泉元首相が解散した2005年総選挙と対照的だ。小泉は政府が運営する巨大な郵便貯金制度を解体して民営化する案で選挙戦を戦った。彼は2006年に辞職するまで5年半政権についていた。
安倍首相は今や小泉氏の記録を抜くのによいチャンスだ。今こそ彼は、小泉氏が遺した変革に伍するチャンスを行使するかどうかについても決めなくてはならない。
<終了>

【ゴリ丸の独り言】
今回の大勝によって、いくつかのことがはっきりしましたが、その中で安倍政権についてだけ言えば、こんな感じでしょうか。
1.安倍首相は解散にあたって今回の総選挙は「アベノミクス選挙」だと言い切ったのですが、それ以外にも課題を数え上げるときりがありません。
集団的安全保障、特定秘密保護法、社会保障改革、財政改革、(一票の格差に関する)議席数削減、中国韓国を中心としたアジア近隣諸国との外交問題、戦後70周年記念、対ロ外交・・・
こうした課題への対処が待ったなしで迫ってきています。それぞれについてどういった方針で臨むのか、安倍自民党は選挙戦の中ではあまり明らかにしていません。選挙戦としては常套手段である曖昧な態度ですが、『ウォールストリートジャーナル』はこの点を強く主張しているのですね。

2.「1強全弱」が半ば固定化してきたことによって、野党再編を経なければ選挙に勝てないことが決定的になりました。「みんな」の解党もこの動きのプロローグだったと言ってよいでしょう。2010年ころまでと同じような政局だったら政党再編は小沢一郎氏を中心に展開したのでしょうが、今回の選挙で小沢氏が再び再編を呼び掛けたものの、大半の有権者はすでについて来ませんでした。新たな再編地図が描かれるのだとすれば、それは誰がお絵かきするのでしょうか?

いずれにしろ、アメリカ経済界はこれからの安倍政権の運営がどのような道を辿ろうとしているのか注視している、うまくすれば小泉政権のように国民的支持を得ることができるのに、というのが本記事の主旨です。安倍首相が思い通りにできる体制はできたものの、そうして構わないかということになると、国際情勢、経済情勢をしっかりと捉えた上で動かない限り、反発を招く恐れがあります。これまでの安倍政権の運営はおおむねアメリカが不満を抱くものではなかったと記事中に書いてあります。確かにそうでしょう。しかし、アメリカが最重要視しているのは、実は同盟国の日本ではなく、中国です。外交、経済、軍事、どれをとってもそうです。中国がどう出てくるのかが良くわからない大国だから、というのが一番の理由でしょう。同様に人口が多いインドと比較してみてもそういえるでしょう。この点はしっかりと捉えておく必要があるでしょう。

安倍政権において注視しなければならないことは、記事中にあるように、世論の反発を見て取ると、安倍首相は引き下がるという動きがこれまでは繰り返されてきたのですが、それが今後もしっかりと続くのかどうかです。議会内反対勢力=野党は取るに足りません。思う通りに議会運営できます。しかし、党外においては世論の反発が予想されます。特に集団的自衛権を含む安全保障、特定秘密保護法、対アジア外交戦略については根強い反発が国内外から寄せられています。党内においては、石破茂、小泉進次郎を中心として、「奢ることなかれ」とする比較的穏健な民主主義を求める勢力があり、これが地方議員から強力な支持を受けていると言われています。
さて、安倍首相はどのようにこの局面を切り抜けるのでしょうか?
~この稿おわり~

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