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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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安倍自民党の大勝を『フィナンシャルタイムス』はどう伝えたか?

総選挙の結果を報じた海外メディアめぐりは第3回です。
今日は、主に経済の面から分析した『フィナンシャルタイムス』です。
他でも訳されていますが(一例はこちら)、あえて自分でちゃんと見ておきます。
"The truth behind Shinzo Abe’s election ‘landslide’"安倍晋三総選挙に“地滑り的勝利”を得た裏の真相」です。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
日本ではよくあることだが、必ずしも見た目とは異なることがあるので、真相を今少し深く探らねばならない。
「先週の選挙に勝つのはだれか?」この質問は文法が間違っているばかりか、ばかげたものだ。
安倍晋三は一か八かで総選挙に打って出て、大勝利を収めた。野党は不意を突かれ、不景気の真っただ中で敗北を予測した声があったにも関わらず、連立政権は衆議院の3分の2議席を獲得する「圧倒的多数」を維持した。さらに、内閣改造に際して5人の女性が登用されたために登用を見送られたことに怒った党内のからの反逆の萌を摘んだ。安倍首相は誰がボスかを示したのだ。彼は来年の自民党総裁選を楽々と勝ちぬくだろう。そうすれば2018年後半までは政権を維持し、過去50年間で最長の任期となるだろう。こう予測してくると、彼は大勝利者だ。そうなのだが、日本ではよくあることで、必ずしも見た目とは異なることがあるので、真相を今少し深く探らねばならない。
第一に、わずか4議席とはいえ、安倍自民党が議席を失っていることだ。投票率52%は衆議院選では戦後最低の投票率だ。棄権した人たちは、もし投票すべき候補者がいたとすれば、安倍首相に反対する票を投じていただろう。野党第一党の民主党は足並みを乱し、候補者を立てられない選挙区があったほどだ。こうした状況にもかかわらず、民主党はなんとか11議席を増やした。
大勝したのは自民党の連立相手である公明党と、2倍以上に議席を増やして21議席となった共産党だ。これによって共産党は国会に単独で法案を提出できることになったが、これは保守的な安倍首相の好まざるところである。もしかすると、国会の場で全員が「インターナショナル」を歌うことにでもなるのだろうか?安倍首相が一番好きな安全保障政策については、仏教団体から強力な支持を得ている公明党が獲得した議席は同様に心配の種だ。仏教界は日本の平和憲法の改定を支持するとは明言していないからだ。
安倍首相は今や殆ど間違いなくその野心をあきらめねばならないだろう。もちろん、公明党が連立政権においてより大きな影響力を持つことが条件だ。安全保障に関してより強硬な態度の右翼政党は敗れ去った。長きにわたって政治を見てきたマイケル・チュチェック氏は自身のブログで自信を持って、安倍首相の右翼的アジェンダは選挙が終わったその場で停止したのであり、安倍首相は修正主義者のアジェンダにリップサービスせざるを得ないと明記している。チュチェック氏の投稿は“How Prime Minister Abe Lost on Sunday”(訳注:「安倍首相は日曜日にかく敗れたり」の意)という挑発的な題だ。
これは過激に過ぎるのかも知れない。外交問題以上に、安倍首相の運命を握るのは経済問題だ。この点では前述の議論の逆が当てはまるのかも知れない。つまり、外見以上に事態は良いのかも知れない。表面的には日本経済は完璧というわけではない。4月の消費税増税によって打撃を受けた。これによって2四半期続けて経済が縮小しており、最新のデータが信頼に足るものだとすれば、回復は非常に緩やかなものに過ぎない。
これはもう古いニュースなのかも知れない。今後18カ月間、経済は力強い歩みを取り戻すだろう。消費税増税の脅威は少なくとも2017年までなくなったからだ。2回目の量的緩和によって円は2年間で対ドルレートを45%改善し、大いに競争力をつけた。何年間も企業が海外投資してきた時期を経て、真の国内設備投資の見込みが出てきた。古河電工および、東レ、ダイキンといった工業大手が国内に工場設備を建設中だ。次はトヨタだという噂だ。
こうした企業は雇用を回復はしないが、少なくともより弱い円建てではあっても利潤を増やすだろう。昨年、労働組合は1パーセントの賃上げを要求し、0.8パーセントを確保した。東京のJPモルガンのジェスパー・コール氏によると、今年組合は2パーセントの賃上げを要求し、たぶん実現する見込みだ。非正規雇用の賃金のかなりの部分はすでに年率6パーセント上昇している。労働市場は厳しく、求人に対して応募者が上回っている。毎年12月、郵便局は、発送された1兆枚余の年賀状を処理するために臨時雇いを募集する。2年前には時給970円だったが、昨年は1,080円に上がった。今年は時給1,450円だ。物価は逆の方向に向いている。これは主に、原油価格上昇に起因する「原価上昇が招いた」インフレによるものであり、原油価格の急落に伴って下落している。賃金が上がりさえすれば、人々は安心して支出を増やす。そうなれば、「原価上昇が招いた」インフレに代わって「需要主導型」のインフレが起こるが、これこそ安倍首相が望むものだ。
言うまでもなく、これは少々おとぎ話めいたシナリオだ。しかし、わずかながらでも事実が含まれているとすれば、安倍首相は最終的に先日の総選挙に勝ったことになるのだ。
<終了>

【ゴリ丸の独り言】
一瞬何を言っているのかと思いましたが、読み進めると非常にわかりやすい記事でした。
論点として、第一には、公明党が連立政権でより大きな影響力を持った場合(議席を増やしたので実現可能と見ているようです)には、安倍晋三首相の悲願である憲法改定はとん挫するだろうという点です。
法改定が進んでいない以上、改憲のハードルは高いままです。3分の2の議席を持っているとはいえ、自民党内にも慎重派がいますし、また、国民の反対を無視して新解釈を閣議決定だけで決めてしまいましたが、新解釈があるのならば9条の改憲は不要だという論理も成り立つでしょう。
第二には、大企業の動静については文責が正しいと思われるのですが、中小企業に対する視点が欠如しています。賃上げや労働市場に関する分析は、大企業に引っ張られて中小企業も改善されるという古典的な見方に終わっています。現実には大企業と中小企業の格差が広がるばかりです。賃金や設備投資に関するデータは大手に関するものだと思っていた方がよいと思います。実際にアンケート用紙が官庁から送られてくるのですが、中小企業には、アンケートに関わり合っている余裕などないという事情の企業も数え切れないほどあります。しかも、官僚は自分たちに都合の良い数字を実に巧みに作り上げます。どのような数字をオミットしているのか、注意深く見る必要があります。
いずれにしろ、安倍自民党が総選挙に勝利したと言い切るためには、諸条件をクリアする必要があるという本記事の主旨には頷くところが多いと思います。
~この稿おわり~

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