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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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有刺鉄線に囲まれたベースボール 日系二世の野球史

銭村健一郎をご存知でしょうか。アメリカではKenichi Zenimuraとされていますが、本名は銭村健一郎です。
広島に生まれ、家族とともにハワイに移住。野球を続けたくてカリフォルニア州フレズノに移り、チームを立ち上げ、後には二世リーグを設立しました。日米の野球交流にも尽力し、文中にあるようにアメリカ国内では大リーグ選抜と対戦し、途絶えていた日米野球の再開にも貢献したのです。そんな銭村も第2次大戦が起きると敵国性を持った日系アメリカ人として収容所に監修され、遠くアリゾナ州のヒラリバー戦争移住センターに移されました。そこで彼は、収容所生活の中から野球を始める運動を起こし、最盛期には32チームがリーグ戦を行い、収監された日系人の希望となったのです。
この銭村健一郎の物語を扱った子供向けの図書『有刺鉄線に囲まれたベースボール』が今日のテーマです。
『インターナショナル・エグザマイナー』から "‘Barbed Wire Baseball’ a feast for the eyes and nourishment for the soul"「目で楽しみ、心を豊かにする“有刺鉄線に囲まれたベースボール”」をご紹介します。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
ジャッキー・ロビンソンの話は誰でも知っているが、銭村健一についてはどうだろうか? 今では、子どもも大きくなった子供も、日系アメリカ人にとってのベースボールのみならず、日本のプロ野球にも変革をもたらした野球人の先駆けについて学ぶことができる。
最近出版された子供向けの絵本「有刺鉄線に囲まれたベースボール」は銭村健一(1900年~1968年)の一生を、両親の希望に反して野球選手になる以外にはありえなかった8才から、第2次世界大戦中にヒラリバー戦争移住センターでの生活において、6千人の人々に野球をもたらした大人に至るまでの物語を描いたものだ。想像力に富んだイラストと柔らかな語り口を通じて、夢、逆境、勝利のストーリーが見事に描かれている。
日本生まれだがハワイ、カリフォルニアに育った銭村は、まさに日系アメリカ人の野球の父に他ならない。この本でも役割を果たしている彼の最も有名な写真で、ヤンキースの地方巡業にあたって1927年にフレズノでエキシビションが行われる前にベーブ・ルースルー・ゲーリックと並んでいる。この写真で2人の大柄な野球人が小柄な銭村におおいかぶさるように立っているが、これによって彼がどのポジションでもぬきんでた偉大な野球人でもあったことがわからなくなっている。彼は、2007年にデスモンド・ナカノが映画「アメリカンパスタイム」を制作した際、父親役を思いつくきっかけだった。。
イラストレーターにユウコ・シミズを起用したのは、タイム、ニューズウィーク、ニューヨークタイムス、ニューヨーカーのような主要な出版物に作品が採用されていたので、素晴らしい選択だった。シミズの現代の日本人の感性は、あの時代のみならずストーリーにも信憑性を持たせるものだ。
彼女の抑え目の色使いと伝統的な日本のモチーフは過去を想起させ、現代的な構成と読者の視点は心を動かすのみならず、物語を生き生きとしたものにして、話の展開を実に効果的に進めるものとなっている。イラストは創造性に富んでいて、子どもの興味に訴えかけている。あるイラストでは、銭村がベースランニングしている構図で、低いアングルから見た絵になっているので、彼がよくある日本の雲を飛んでいるように見える。
巻頭で読者は、よくある題名のページと表紙を見るだけで何か素敵なことがあとのページに続いていると感じるのだが、そうしたものはこの本にはない。題名のページには年代物の野球観戦のチケットのデザインで版元の情報が書いてあり、手がそのチケットを有刺鉄線の前でつかんでいるのだ。表紙は骨董品の野球カードに似せてある。
著者のマリッサ・モスは大量の情報を提示するという尊敬に値する仕事以上のものを果たし、ストーリーには無駄がなく、それでいて子どもが興味を持つように感動的なドラマがある。彼女は、若い読者にわかるようにしながら、年長の読者が興味を持つような言葉づかいをバランスよく使っている。イラストには非常に頻繁にキャプションが付いていて、イラストとキャプションが見事に調和している様子がわかる。
子供向けの絵本にこのストーリーを吹き込もうという試みはたやすいものではなかった。遠い過去を呼び起こす一方、子供向けに人物像を実際らしく生き生きとさせておくのは、大人向けの作品よりもはるかに難しい。
物語は事実に基づいたものであり、しきりと疑問がわくので、年長の子どもと親にとっては、付録についている3ページがありがたい。銭村健一の簡単な年代記、著者、イラストレーターによるメモ、探究心がある子どもや早熟な子ども用にURL付きの文献目録さえついている。
目で楽しみ、心を豊かにする「有刺鉄線に囲まれたベースボール」は個人の成功物語を喚起し、戦争移住センターのフェンスさえ人間の精神の力を封じ込められないことを示しているのだ。
<終了>

【ゴリ丸の独り言】
先週、日本にベースボールを伝えたほーレス・ウィルソンの子孫が来日した時の話をご紹介しましたが、今日はその話から50年以上あとの話です。まだまだ日本では今ほど普及していなかった野球ですが、ハワイに移住した銭村にとっては、サクセスストーリーのアメリカを典型的に示したのが野球の魅力だったのではないでしょうか。スポーツをすることで彼はアメリカに同化しようとしていたのかも知れません。または、アメリカに心理的にはどうかしていた彼としては野球をすることは当たり前だったのかも知れません。
いずれにしても能力を発揮した彼は、大戦勃発とともに自らの理解を超えて収監されてしまいます。彼のすごいところは、それでも野球をするところですね。球場の建設からはじめて、チームを編成し、リーグ戦を運営する。選手のみならず、マネジメントでも大いに手腕を発揮したそうです。
まだまだ有色人種が大いなる差別に苦しんでいたアメリカで、野球人としてプロフェッショナルになるという夢を追い続け、ようやく成果が出始めたところで収監されて挫折を味わい、それでも有刺鉄線の中で野球をするという夢を実現させた彼の物語は子どもならずとも興味深いものです。
ゴリ丸は、大リーグ選抜の来日再開の際に彼が尽力したという話を知っていましたが、今回、改めて彼の物語を知るにつけ、先人の偉大さに再度感服した次第です。
~この稿おわり~

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