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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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日本の「記憶喪失」を懸念するドイツの『ヴェルト』

今日ご紹介するのは、1か月ほど前の記事になりますが、総選挙の結果が出て数日後のドイツ『ディ・ヴェルト』の社説 "Japans Gedachtnisverlust" 「日本の記憶喪失」です。
その意味では、すでにご紹介した"Shinzo Abe wird immer machtiger" 「 安倍晋三の権力拡大はとどまる所を知らず」とセットになっていると考えてよいでしょう。
訳に入る前に押さえておきたいのは、安倍首相が「記憶喪失」である、つまり、特に第2次世界大戦において日本が犯した過去の罪過を忘れて右傾化しようとしている、再軍備を企んでいると非難するのは、一般的には中国、韓国、北朝鮮などの(東)アジア諸国です。そこには外交上の駆け引きは言うに及ばず、それぞれの内政事情も絡んでいて、必ずしも日本を徹底的に攻撃することが目的というわけではなく、経済的支援やエネルギー政策などで譲歩させようという思惑もチラホラ見えている・・・これが安倍首相の「記憶喪失」を論じる場合の一般論と言ってよいでしょう。
では、ドイツの『ヴェルト』は安倍首相の「記憶喪失」をどう論じているのでしょうか?
なお、同紙は中道右派の新聞と言われ、日本の読売新聞と提携していますが、新聞社自身は「リベラル・世界市民的」と自称しています。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
成長の代わりに排外主義
安倍首相の下、かつて栄えた豊かな島国日本を脅かしているのは続いている景気停滞だ。彼は愛国主義と歴史の忘却を取り違えてもいるし、専制主義的な態度をとる傾向にある。

安倍晋三が仕掛けて、勝利した。彼は自分ではそう思っている。しかし安倍政権の下で日本は多くのものを失うことになる。なぜなら、安倍首相が新たに4年の任期を得たのは、励みになるような収支バランスのおかげといったようなものではなく、野党側の恥ずべき自暴自棄と戦後最低の投票率のおかげだからだ。一方、完全に明らかなことは、通貨緩和策と常に新しく出される政策による「アベノミクス」がスタグネーションのおかげで導き出されているかどうかによって、日本が支払い不能に陥るかどうかが決まるということだ。これは日本帝国が侵略戦争を行った際にもれなく犠牲になった近隣諸国からすれば当然信用ならない話であり、安全保障上のパートナーであるアメリカの関心事だ。安倍は歴史を忘れる逆行によって日本の将来を確かなものにしようと望んでいる。バックトゥザフューチャーというわけだ。
選挙に勝利し、憲法改正に必要な3分の2議席を確保した日に安倍首相が憲法9条の廃止に言及したのは単なる気まぐれではない。その中に規定された平和主義の放棄は、裕仁天皇の寛容を確たるものにするために必要な勝利者の力を示している。現実離れしたような「軍備」放棄の一方で、予算レベルでは「自衛隊」が世界で6番目の軍隊であることは常に明らかだった。そして安倍晋三を身近に感じている国家主義的右翼にとって自衛隊は名誉を傷つけるものだった。2年間、彼の祖父岸信介は、開戦を準備した東郷英樹将軍の戦時内閣に名を連ねていた。岸は努力を要せずに免罪されて政権に就いた(1957-1960年)。彼の一族にとっては誰も抗するものはなく、家族史からの教訓は各自が引き出さねばならない。安倍晋三が、日本の教科書は子どもたちに日本帝国の軍事支配に関する修正主義的修整像を信じさせるように求める際、そのメッセージに悪びれる所はない。
教科書検定審議会が太平洋戦争および日本が韓国を植民地支配した時代(1905-1945年)を巡る史実に関する記述について韓国、中国と合意に至るのには数十年を要した。侵略が「進出」、攻撃が「出来事」、侵略戦争さえ神風が吹いてアジアにもたらされた台風に過ぎなかったとされてきた時間はあまりに長い。南京虐殺を過大に評された小競り合いと捉え、前線における韓国人の性奴隷たちは自発的な尻軽女だとする、このような半ば盲目的な考え方をして、安倍晋三は日本の青少年を露骨に逆行させようとしている。
日本の政治家たちが自国民に対し、誇り高き文化国家としての大きな将来性をもっと信じようという希望を再び与えようとするのには何ら抗するものではない。また、安倍晋三が女性たちの当然の権利として仕事に就くのを支援して、企業におけるお飾りとしての存在を打破するつもりであれば、それは称賛に値する。ただ、過去を歪曲したり消し去ろうとする意欲は将来に向けてはならないし、強さを回復させてはならない。
日本の弱点は高齢化だ。有権者の平均年齢は50代終わりであり、投票率ではシニアが20代の有権者の2.5倍だ。日本のメディアは「白髪の民主主義」、つまり大まかに訳すと「老人たちによる独裁」なるものを非難している。選挙年令を下げようという法案を巡る議論がある。だが、創造的で型破りな青年を社会が排除している以上、たいした助けにはならないだろう。選挙区が「世襲」だとすれば、若き候補者はどうやって当選すればよいのだろうか?1992年以降の15人の首相のうち12人は安倍晋三のように名門政治家の出だ。政党システムは機能せず、人々は誰も選ばないか、無関心のうちに最も強い候補を選ぶ。左派リベラルの毎日新聞は選挙戦に臨む社説で「日本の過去には政党政治が機能を放棄した時代がある」と書いた。「結果、それは戦争へとつながった。」また、近隣諸国と和解することが必要ない時代もあった。80年代半ばの狂乱の時代には元気な日本企業がアメリカのビルやゴルフ場を免税品のように買いあさった。ソニーは今日のアップルのように格好よく、傑出していた。交換レートと地価がある日急落し、恐るべき負け犬国家の急落が始まったとき、日本は孤立を自覚した。友好国はなくなり、敗者が他人の不幸を喜ぶ気持ちを味わわねばならなかった。当時、新聞には陰気なコメントが載り、風刺画は国旗の日の丸を、国家としての誇りにできた涙にぬれた傷を覆う包帯のように描いていた。
あのような気弱な状態に戻りたい者などいない。アジアには、より小さな国々と一緒になって中国の拡張願望へ対抗し得る力として作用する自信を持った日本が必要だ。アメリカは歴史を改ざんして近隣諸国に冷たい態度を取らないような信頼に足る安全保障上のパートナーが必要だ。とりわけ、アメリカの圧力によって12月10日に新しい法律が施行され、政府部内における秘密漏えいが秘密の暴露行為に格上げされ、厳しい罰則が科せられることとなった。たとえ公益に資するとしても、将来的にはアメリカと同様に日本の「内部告発者」になるだろう。
アメリカ政府には安倍がこのような逆行をするだろうということが分かっている。自国のジャーナリズムが世界一自由だと思っているような国において、日本の自由民主党による無遠慮な検閲の脅威はあまり効果がなかった。安倍自民党は先日の総選挙前に絶対的な公平さをメディアに要求した。それによれば、安倍首相を批判する場合は反論させろというのだ。彼はすでに2006年の第一次政権の時に、メディアによる尊敬の念の欠如と敗北主義的行動に怒っていると批判している。今回の選挙戦で日本の放送局は2012年の総選挙と比べて政治的内容の放送を3分の1の時間しか行わなかった。
小説家の村上龍は作品『半島を出よ』の中で、国際社会から見捨てられ、北朝鮮による侵略に対峙している、経済的に破滅した日本を描いている。政府はこわごわと何もできないでいる。いつでも暴力に走る用意があり、社会からは見捨てられていた少年たちの一団がゲリラ戦を展開して解放者となるのだ。「日本には未来がない」とはこの小説の一節だ。安倍晋三は自分と向き合うかも知れないし、日本によりよい未来をもたらすかも知れない。だが、日本の未来が記憶喪失の上に成り立つものであった場合は、よりよい未来とはならないだろう。
<終了>

【ゴリ丸の独り言】
自民党政権のある部分は認めるし支持するが、安倍晋三首相がしたくてたまらない「戦後レジームからの脱却」のある部分をドイツの新聞は明確に「記憶喪失」と捉えていて、日本の将来がそれに立脚したようなものであってはならないと明白に懸念を持っていることを把握しておく必要があると思います。
それにしても、よく言われるように、安倍首相の行動規範のある部分は、祖父岸信介の遺恨を晴らすために行われているのではないかと思われてなりません。
それが一番「あってはならないこと」だと考えます。
~この稿おわり~

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