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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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シャルリー・エブド テロ攻撃に対する各国の対応

シャルリー・エブド襲撃事件についてはすでに皆さんもご存知でしょう。
当初は言論の自由に対するテロによる暴力に国際世論が断固戦うという図式の一辺倒でした。その後、シャルリー・エブドが復活したのですが、その最初の新聞は風刺画のオンパレード。1面にはイスラムの預言者ムハマドの風刺画が踊っていました。
これを機に、シャルリー・エブドの活動は「宗教の冒涜」なのか「言論の自由」なのか、という議論でフランス自体が二分されている状況です。日本でも、宗教を風刺する、揶揄するということはフランスの(または欧米の=キリスト教の)傲慢であるという議論も見られます。フランスは為政者から市民の力によって自由を奪取したので、一概に日本人の感覚から論じてもいけないという議論も見られます。
やや的外れかと思いますが、もし天皇が風刺画にされていたら日本人ならば不愉快ではないか、といった発言をした評論家もいました。日本人=神道信者でしたらそうでしょうが・・・
パリで行われた抗議行進に各国閣僚とともに参加したパレスチナ自治政府のアッバス議長も、テロ事件後に再び風刺画を掲載しても、再び憎悪を巻き起こすだけだと朝日新聞の単独インタビューで答えています。
ここでは、国際社会の議論が正に今現在変容しつつあることを把握するために、当初の議論を今一度押さえておきたいと思います。
イギリス『テレグラフ』紙から "Charlie Hebdo: world leaders' reactions to terror attack"シャルリー・エブド テロ攻撃に対する世界のリーダーたちの対応」をご紹介します。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
国際社会がシャルリー・エブドに対するテロ攻撃に対する非難に一致したので、世界各国の政治的対応をまとめてみた。

アメリカ
バラク・オバマ米大統領は語った。「フランス、そしてこの常軌を逸した攻撃が起きた偉大なるパリは、これら殺人者たちの憎むべき像を超えて続く永遠の模範を世界に示している」
ジョン・ケリー国務長官の発言もオバマ大統領の言葉に同意したものだ。「彼らは武器を振りかざすかも知れないが、われわれはフランスと米国においてもっと強力なもの、すなわち単なるペンに止まらず、恐怖ではなく自由を表すペンを振りかざす人々と責任感を共有する。」

ドイツ
メルケル首相は次のように語った。「今日パリで起きたものはわたしたちが共有する価値に対する本当に野蛮な攻撃だ。ヨーロッパに住むわれわれ全員がこの攻撃を糾弾し、わたしたちの考えはフランス国民、とりわけ愛する人をこの忌まわしい攻撃によって失った人々に向けられている。」

イタリア
フランシスコ教皇は、シャルリー・エブドの事務所で起きたテロ攻撃の犠牲者を悼んで行われた早朝のミサで祈りを捧げた。
バチカンにある教皇の住まいカーサ・サンタマルタで教皇は次のように語った。「(水曜日に)パリで起きたテロ攻撃は人間の残忍さを思い起こさせ、個々のテロと国家によるテロの両方を思い起こさせる」
「この残酷な出来事の犠牲となった人々のためにミサで祈りをささげよう。かくのごとき残酷な事件の咎人のためにも祈りをささげよう。神よ、彼らが悔い改めますように」

ロシア
普段は強硬な政治家たちが、この攻撃によってフランスとロシアに共通の理由付けが生まれたと理解した。日頃は攻撃的な態度を取るロシア下院国際問題委員会のアレクセイ・プシュコフ委員長はツイッターでフランス語を使ってつぶやいた。「フランスとロシアのテロ攻撃の起源は同じだ。対立しているのではなく、協調するための理由が一つ増えた。」
ウラジミール・プーチン大統領は「このシニカルな犯罪」を非難し、犠牲者とその家族に哀悼の辞を述べた。

ノルウェー
2011年、ノルウェーで77名が殺害されたのはイスラム過激派によってではなく、狂信的右翼のアンネシュ・ベーリング・ブレイビクによるものだった。
エルナ・ソルベルグ首相はフランスのフランソワ・オランド大統領に弔辞を送った。
「ノルウェー政府を代表し、シャルリー・エブド編集部に起きたおぞましい殺戮に対してお悔み申し上げる。パリで起きたこの攻撃は、表現の自由を保持すべきと考える全てに人々の心を動かした。わたしたちは、恐れのあまりに自己検閲してはならない。」
「犠牲者、そのご家族、そしてフランス国民と私たちの心は完全に共にあり、深き共感を覚える。」

エジプト
アブドルファッターフ・アッシーシ大統領はフランソワ・オランド大統領に弔電を送った。「テロは、国際的な協力の努力によって、これに対峙し、撲滅しなくてはならない。」
エジプト国営の中東通信社によると、イスラム教スンニ派の最高教育機関であるカイロのアル=アズハル大学は「イスラムはいかなる暴力も糾弾する」という声明を出して「犯罪的攻撃」を非難した。
「アラブ連盟事務局長ナビール・エル=アラビーはパリのシャルリー・エブド新聞社に対するテロ攻撃を非難する」同紙編集部が襲撃されたのち、同連盟はこのように声明を出した。

サウジアラビア
政府高官は「臆病なテロリストによる行為であり、イスラムもほかの宗教も否定するものだ」とした。
「ご家族、犠牲者、そしてフランス政府と国民に哀悼の意を表すとともに、傷が速やかに癒えるように願う。」

レバノン
タンマーム・サラーム首相は「受け入れ難い、正当化され得ないテロリストの行動」を非難した。
彼は「この痛ましい状況において、犠牲者のご家族に対する共感」をフランソワ・オランド大統領あてのファックスで表明した。
サード・ハリリ前首相も攻撃を非難し、実は犯人による攻撃はイスラムの教えと価値に向けられたものだと語った。
「犯人像に関する目撃証言によるものが正しいとすれば、聖なる予言者の名を騙り、復讐と最も憎むべき行為を行う者たちは、イスラムとフランスの関係に悪影響を及ぼすのみならず、宗教、価値、教義として、そして宗教間の節度、対話と融合を永遠に求めるものとしてのイスラムを攻撃してもいるのだ」
ハリリはさらに続ける。「いずれにしても、パリへの攻撃は的外れなもので、イスラム教とフランスに何十年も住み、社会的権利、政治的権利、人権を享受してきた何千人ものムスリムに害を与えるものだ。」

インド
ナレンドラ・モディ首相は「卑劣な攻撃」を非難した。彼はツイッターで次のようにつぶやいた。「パリで非難されるべき卑劣な攻撃が行われた。われわれはフランス国民と共にある。被害者の家族のお気持ちを察する。」
アルン・ジェートリー財務大臣もツイッターで攻撃を次のように痛烈に批判した。「パリでの発砲事件は人間性に対する醜い攻撃だ。これはテロに対抗して国際社会が一致団結すべきという警報だ。」

オーストラリア
トニー・アボット首相は、オーストラリアの人々が言論の自由を訴えて街頭デモを行った際に、パリで起きたシャルリー・エブドに対する攻撃を「野蛮な行い」と表現した。
アボット氏は表現の自由は自由社会の土台となるものだと発言して、犠牲者の家族へ哀悼の意を表した。
「オーストラリアは、この困難に際し、フランス国民とフランス国家と共に立つ」と彼は言った。
メルボルンでは、攻撃の犠牲となった人々を思う出すために地元のフランス人コミュニティが組織した反対運動に1000人以上の人が参加した。
「宗教や政治についてどう考えるかは関係ない。結束することが大切だ」と主催者のメーヴァ・シエナは語った。彼女の友人はパリで負傷したのだ。

日本
日本の安倍晋三首相は7日に死者を出した銃撃事件に対し、フランスのフランソワ・オランド大統領宛のメッセージに「大きな驚きと憤り」を表明したと今朝外務省が発表した。
安倍首相は「いかなる理由であれ、われわれは卑劣な行為を断固非難する」「犠牲者のご冥福をお祈りするとともに、心からご家族にお悔み申し上げる」と語った。
「この困難に際し、日本はフランスと共にある」と彼は言った。
岸田文雄外相も同様のメッセージをフランスのローラン・ファビウス外相に送った。
パリで銃撃事件が起きたのち、日本の外務省はフランスへの旅行客やフランスに滞在する人たちに対して、たくさんの人が集まるデパート、市場などに行く際には注意するように水曜の夜には警告を発した。

韓国
木曜になって韓国は、テロに対抗する国際社会の努力に加わるために、フランスの風刺画週刊紙に対する「ショッキングなテロ攻撃」を強く非難した。
シャルリー・エブド本社に対するテロ行動によって警官を含む多くの人々が亡くなったことに政府はショックを隠せず、このテロリストによる行為を強く非難する」という声明を外務省が発表した。
「韓国政府は犠牲者のご冥福をお祈りするとともにご遺族とフランス国民に深く哀悼の意を表す」
「テロは正当化し得ないもの、反文明的で反人間的な行為であり根絶されねばならないという確固たる立場を堅持しつつ、韓国政府はフランス政府のテロとの戦いを支持する」と表明した。
さらに、テロを根絶しようとする国際社会の努力に際し、韓国政府は積極的に行動すると加えている。

南アフリカ
南アフリカ政府のクレイソン・モニェラ報道官は「計画的で野蛮な」攻撃を非難した。
「ジャーナリストと一般市民への計画的な攻撃は国際法に反しており、人間性に対する犯罪である」と彼は語った。
「南アフリカはテロを断固として非難することによって国際社会と共に立ち、いかなる形態であろうとテロを厳しく非難すると表明すべく地域的および国際的な努力を続ける。」
「アフリカ連合委員長のノーサザーナ・ドラミニ・ズマ博士は、この悲劇的な事件は報道の自由とあらゆる形態の表現の自由に対する明白な攻撃だと語った」とアフリカ連合は声明を発表した。「このテロ行動は、世界で起き続けている他の行動と同様に非難され、国際社会によって全力でこれに抗せねばならない」

中国
中国外務省の報道官は、中国政府は「テロ攻撃に深く衝撃を受けた」と語った。
「我が国はこれを強く非難する。中国は犠牲者のご冥福を祈り、ご遺族と負傷者に心からの共感を表する。中国は、いかなる形態であろうとテロに断固として反対し、フランス国内の安全を図るための努力を支持する」と続けた。
中国政府の声明では、言論の自由には触れられていない。

イスラエル
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、同国訪問中のノルウェーのブルゲ・ブレンデ外相と木曜日に行った会談において急進的イスラムを攻撃した。
「昨日起きた死者を伴う表現の自由に対する攻撃は、われわれが認める価値を急進的イスラムが軽蔑していることを明白に示したものだ」「われわれは自由と寛容を尊重する。彼らは専制とテロを崇拝する。しかも、このテロを通じて、彼らは人類に新しい暗黒の時代をもたらそうと画策している」
「こうした過激派は世界の動きの一部であるし、世界に反応を起こさせるものだ。われわれの決断の強さと一致した行動をもってすれば、われわれに共通の文明に対するこの脅威を打ち負かすことができると信じている。そして、テロに対する戦いに必要なものは勇気、明瞭さ、普遍性だ」
最近イギリスを含むヨーロッパ諸国の議会でパレスチナを国家として認める決議がされていることを示唆しながら、彼は続けた。「イスラエルはヨーロッパを攻撃しているのと同じ勢力に攻撃を受けている。イスラエルはヨーロッパと共にある。ヨーロッパはイスラエルと共にあらねばならない。」
ルーベン・リブリン大統領もオランド大統領に宛てたお悔みの書状でイスラエルの経験を引き合いに出した。
「自由社会の誰しもがテロの脅威に直面しており、一致して自由な思考を抑圧し、このように多くの人々の命を奪おうとする者たちに立ち向かわねばならない」とリブリンは言う。「悲しむべきことに私はこのような死者が出る攻撃による恐れと悲しみを知らないわけではない。われわれは、いかなる民主主義においても主柱となる言論の自由と報道の自由を断固として守ろうとするフランスと共にある」

パレスチナ自治政府
パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、ラマッラーの議長府で発行された声明によると、フランソワ・オランド大統領宛ての電報でこの攻撃を「凶悪犯罪」と呼び、「道徳と宗教によって非難されるものだ」と語った。
声明によると、「議長はフランス大統領、フランス国民、パレスチナの同胞、犠牲者の家族に対して弔意を表し、犠牲者の魂に慈悲を請い、負傷者の速やかな回復を願い、彼らの家族に忍耐と勇気を願った」という。
パレスチナ・ナショナル・イニシアチブのムスタファ・バルグーティ幹事長は殺人をイスラムと区別し、その代わりに、1987年にロンドンで不詳の殺人者によって銃撃され亡くなった、傑出したパレスチナ人の風刺画家ナジ・アル・アリと比較した。
「勇気あるジャーナリストの殺害をもたらしたこの攻撃はイスラムやムスリム文化を表すものではなく、むしろ世界中の思想の自由の声を消そうとする暴力を圧するものを表している」と言う。「パレスチナ人の風刺画家ナジ・アル・アリが1987年に殺されたのと同様に、(シャルリー・エブドの)風刺画家であるウォリンスキー、カブー、シャルブ、ティグノアは今日自分たちの自由と意見のために命を奪われたが、彼らの声は決して消えることがない」
ナジ・アル・アリが殺されたことにより、当時のマーガレット・サッチャー首相はイスラエルの対外諜報機関モサドのロンドン拠点を閉鎖させた。同機関はパレスチナ人の二重スパイによって殺害計画を事前に把握したが、イギリス当局に通報しなかったのだ。
<終了>

【ゴリ丸の独り言】
複雑ですね。まとめて言ってしまえば、国際社会が一致して言論の自由に対するテロ攻撃を非難しているということになりますが、当然のことながら各国各様に微妙な違いがあります。これが当然であり、これが国際社会なのだと思います。
気づいたことを少し。
1.日本と韓国の対応については時系列を示す語句が出てきます。アジアですから時差が出ても仕方ないのですが・・・
この記事が載ったのは8日木曜日。
日本については、安倍首相がオランド大統領に、岸田外相がファビウス外相にメッセージを送ったのは8日木曜。ところが、渡仏旅行客および在仏邦人に警告を発したのは事件当日の7日水曜の夜と明記しています。ホンネとしては、「順序が違うんじゃないの?」と言いたいところなのでしょう。韓国についても政府コメントは8日と明記しています。「遅いんじゃない?」と言いたいのでしょう。
2.中国政府はやはり言論の自由についてはコメントしませんでした。彼らの論理からすれば当然です。まして、この事件自体が中国国内でどれほど周知されているのか、疑問です。言論の自由を抑圧するためにはテロ=暴力を以てする勢力が世界には存在していて、その勢力は世界中から非難を浴びている、というのが表面的には今回の事件の(今のところ)大まかな図式です。少し穿った見方をすれば、中国政府自身が日常の中で言論の自由を弾圧しているのですから、それに対して暴力を以て対抗することは、世界の他の地域でも行われているのだと考える反体制派が中国にいたとしても不思議ではないのです。
3.イスラエルとパレスチナ自治政府の対応に最も行を割いています。これ、実はイギリスは(少なくともテレグラフ紙は)イスラエルとパレスチナの情勢が非常に気になっている、注目すべきであるというメッセージだと思います。この地域について書き始めると本が1冊できてしまいますので、今日はこの点を指摘するにとどめますが、いずれにしても、イスラエルとパレスチナ、それに対するキリスト教社会とイスラム社会の対応と反発、これには引き続き注目していかねばなりません。

さて、冒頭に書きましたように、この記事が出たころから情勢は変化しつつあります。宗教に対する風刺画は宗教に対する冒涜か、言論の自由を表したものか・・・ 議論はまだまだ尽きません。
~この稿おわり~

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