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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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デフレからの脱却は可能か? 日本の歩んできた道に怯えるユーロ圏

今日は「アベノミクス」が抱える今一つの問題について、イギリスの『ガーディアン』から "Spectre of deflation horrifies bankers, but Japan now has a taste for it" 「デフレの亡霊が銀行家を脅かしているが、今や日本はそれを楽しんでいる」をご紹介します。
安倍自民党は「デフレからの脱却」をテーマに掲げています。日銀もそれに呼応して黒田バズーカを打ち放ちました。たしかに、決して強くない日本経済を背景としているのに円高が続く異常な時代から急激に円安になりました。これは評論家、学者の論を待つまでもなく、量的緩和を行えば自動的についてくる結果であることは自明の理でしたから、当たり前のことが起きたのです。
しかし、インフレターゲットを設定し、政府が「デフレからの脱却」を掲げたことによってデフレーションが終わり、「失われた20年」が終焉を迎えるのではないか、つまりインフレになり、物価も賃金も上がるのではないかという淡い期待が安倍自民党と国民を捕らえました。確かに輸出産業にとって円高は大歓迎ですし、株高になったことによって資産を持つ企業や人々にとってはたいへん楽な時代になりました。
しかし、物価は円高と消費税増税によって押し上げられ、一方、特に日本経済の基盤をなす中小企業は「失われた20年」の亡霊に怯えて、積極的な設備投資にもまだまだ腰が引けています。また、大企業について言えば、(これが重要ですが)株主の40%は外国人投資家ですから、国内経済がどうなるかよりも株主の利益が最優先です。積極的な設備投資や楽観的な賃上げに賛成するわけがありません。こうした原因によって、資産を持たない国民にとっては生活がさらに苦しくなって格差が拡大しています。したがって「アベノミクス」の効果を感じられないという声がよく聞かれるわけです。
物価上昇は確かに見られるのですが、原因は一目瞭然で、モノの価格自体が上がって生産者にフィードバックされているのではなく、急激な円安による原材料の高騰と消費税増税によって値上がりしているだけです。生産者はむしろいじめられています。円安によって輸入原材料は値上がりし、海外に生産拠点を移した企業にとってもコスト高になっているのに、それをそのまま価格に反映できないからです。
こうした日本経済の「惨状」をヨーロッパはどう見ているのか?
そんな観点から読むと、たいへん興味深い記事です。ヨーロッパは怯えています。デフレに慣れてしまった日本を見て。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
ネガティブなインフレユーロ圏を追い詰めているが、日本の消費者は物価下落の日々とどう折り合いをつけてきたのだろうか?

持続するデフレでの生活がどうなるかと思っているヨーロッパ人は牛丼、つまり牛肉とたまねぎがご飯の上に乗っているおいしい日本食一杯を見つけさえすればわかる。
牛丼の価格は世界第三位の経済大国の状態を図る非公式な例だ。というのも、日本はスタグネーションの「失われた20年」に付きまとわれ、消費者は支出再開を断固として拒み続け、自分たちの懐具合が難を逃れるようにしているからだ。
先月、日本最大の牛丼レストランのチェーン吉野家が並の値段を27%値上げすると決定した理由は見ただけではわからない。決してインフレ、すなわち物価値上げの新時代が到来したことを告げるなどということではなく、依然としてたいへんお手頃な380円(約2.11ユーロ)という値段は日本が沈み込んでいるデフレの深さを浮かび上がらせるだけだ。結局、これはほぼ四半世紀の間で初の牛丼値上げだったのだ。
もし日本の経験が何かしらを示唆しているとすれば、デフレスパイラルでの生活は複雑だろうということだ。普通に考えれば、デフレは雇用と経済成長に悪影響を与え、家庭、企業、政府に債務の負担となってさらに重くのしかかる。
だが、平均的な日本人にとって物価下落の20年間にはそれを補うものがあった。消費者は景気回復の兆しをあまりに何度も経験したのである種の順応を示すようになり、これが今やユーロ圏を脅かしている原因だ。
第一に、東京はきっと生活費が高くつくという不当な噂は打ち砕かれた。東京のマクドナルドが100円(約56セント)のハンバーガーを売り、衣料小売りのユニクロが安いお手軽な衣料を売って世界王国を築いたのはごく最近の話だ。
日本の1980年代のバブル時代を思い起こさせる高くつくホステスクラブは今もあるが、ビール1杯がわずか180円(1ユーロ)の居酒屋(パブ)も共存している。ロンドンやシドニーからやってきた人には、東京でちょっとした食事と数杯のドリンクを取っても、故郷と比較して支払いの少なさをにわかに信じられないほどだ。
それでも、経済が右肩上がりし続けるだろうという幻想によって続いた過剰と見栄の1990年代の初頭にバブルが崩壊した直後に日本人が受けた心理的ダメージを見過ごすのは誤っている。高価なレストランから気前よく支払うビジネスマンがどっと出てくるのを待ち受ける黒いタクシーの列は消えなかったが、彼らの話題は大きく変わっていた。企業のリストラ、つまり普通に言えば経費削減の話になった。
バブルに代わって失業率が上がり、安い賃金の請負仕事に飛び回る新たな世代が現れ、彼らは、戦後の貯蓄と気前の良い年金の分け前にあずかる時代が親の世代と共に終わったことを憤っている。
今や安倍晋三首相がデフレを撃退するとしたミッションの3年目に入り、日本の怒りと不安は服従に代わった。
安倍首相の円安政策は両刃の剣だということが明らかになった。より弱い通貨は輸出企業にとっては純利益を押し上げるかも知れないが、配当は賃金上昇につながらなかった。この間、日本企業は労働者と同様に、キャッシュを使うよりもむしろ内部留保する傾向にある。
これによって、日本銀行が立てた2%のインフレターゲットに対する疑念が大きくなった。一方、安倍は2回目の(10%への)消費税増税を延期して、消費高揚と日本をさらに今一度の不況から救い出そうと一か八かの賭けに打って出ている。
しかし日本は、ユーロ圏が必ずしもまだ同調しないという問題に直面している。日本は多分世界のどこよりも高齢化が進行している。出生率が低いことと相まって、今後数十年で劇的な人口減少に見舞われるという予測は現実味を帯びて来ている。また、大量移民受け入れによって消費を押し上げようという考えは、首相に話を聞いてもらえないごく少数の政治家グループを除いては受け入れ難いものだ。それこそが、高齢化し、減少し、用心深い消費者たちに、中央銀行が一時的に狂乱的な量的緩和に打って出ているのに、デフレを享受する術を学ばせているのだ。
20年以上の間に鍛えられた消費習慣はなかなかなくならない。そして、もし日本の経験がヨーロッパに教える何がしかがあるとすれば、デフレの底なし沼から消費者を引きずり出そうとする試みは困難に満ちているということだ。
すべての世代が、自分たちが知っているデフレの悪魔を受け入れるようになってしまった。国民全体でいえば、必要に迫られていやいや始めた節約の習慣はストックホルムシンドロームの経済バージョンに音もなくなってしまったのだ。
だから、値上げされた新価格でも、おいしい牛丼の湯気を立てる一杯は間違いなくお手ごろ価格なのだ。
<終了>

【ゴリ丸の感想】
考えさせられますね。事実として、世の中は高価でもよい品物とそれを(比較的)苦もなく購入する層と、とにかく廉価な品物ともっぱらそうしたものばかりを購入する層に二分されてきています。誤解を恐れずに乱暴に二分すれば、前者は「アベノミクス」を享受している富裕層。後者は本記事に書いてある通り、デフレから学び、デフレに慣れ親しんだ「非高所得層」と言えましょう。
ある銀行マンが言っていました。吉野家牛丼が値上がりしたとはいえ、500円もしない単価で、あの店舗の維持費とスタッフの人件費、管理費、原材料費をねん出しているというのは、驚くべき構造だと。確かに。100円マックの場合はなおさらです。それでも日本マクドナルドは100円マックから利益をねん出しているということです。
スーパーでもやし1袋が9円でした。それでも(たぶん)もやしから利益が出ているのでしょう。だとすれば、原材料はいくらなのか=生産者からいくらで買い上げているのか、心配にさえなってきてしまいます。
いずれにしても、これが日本経済の現状です。売る側も買う側も、さらには生産する側も、低廉な単価に慣れて、それに耐え忍ぶ術を体得してしまったのです。こうなると単価を上げることには勇気がいります。値上げによって売れ行きが鈍るという恐怖にとらわれるからです。
ストックホルム症候群、つまり、元来は誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者が、犯人と長時間過ごすことで、犯人に対して過度の同情や好意等を抱くことをいうわけですが、これが経済にも起きているとこの記事は言うのです。企業、銀行、政府に対して、デフレの初期には(つまりバブル崩壊直後には)憤り、不安に駆られていた日本国民ですが、だんだん慣れてしまって、今では低価格商品とそれを提供する生産者とそれを売る小売業者に共感を持っているわけです。
こうなると、国民のマインドをデフレからインフレにシフトさせるのは至難の業であり、日本の歩んできた道を見ているユーロ圏は不安に駆られるというこの記事の趣旨には頷かずにはいられません。
ECBも量的緩和に乗り出す直前に出たこの記事、ユーロ圏の本音が見えてくると思いませんか?
~この稿おわり~

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