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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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「赤船」襲来=日本が変わる契機

日本がこれからどのようなビジョンを持つべきか、については議論の多いところでしょう。
ひとつの考え方として、キャノングローバル戦略研究所の研究主幹である瀬口清之氏が『「赤船」中国が迫る第2の開国-米国依存からの脱却と国家目標再構築の重要性-』を発表し、これを元米国務省外交官のスティーブン・ハーナー氏が『フォーブス』電子版で取り上げていますので紹介します。
"Japan Desperately Needs A New National 'Vision'--But Not Abe's" 「日本には新たな国家目標が何としても必要だが、安倍首相のビジョンではない」

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
わたしは、中国経済と日米中関係の専門家であるキャノングローバル戦略研究所(CIGS)の瀬口清之氏の並外れて思慮に富み洞察力に優れた研究を引用したことがある。今週、CGISは瀬口氏の素晴らしい、きわめて示唆に富んだエッセイ(日本語)を発表し、大きな反響を呼んでいる。
エッセイの題名は『「赤船」中国が迫る第2の開国-米国依存からの脱却と国家目標再構築の重要性』だ。
わたしは瀬口氏の主張にすべからく賛成であるし、彼が言葉にしなかった点についても理解していると思う。つまり、日本は平和理念に貢献する国家と社会を完成させ、国際情勢においては日米防衛同盟を廃棄し、対立する米中の狭間で地政学的中立を追求し、平和主義、脱原発、人道主義を実施しかつ促進するという国家目標である。
瀬口氏はエッセイの冒頭で、1853年にアメリカのペリー提督の「黒船」が到来して、250年以上続いた「鎖国」を解いた日本の「開国」に触れている。わずか15年後、明治政府が権力を掌握し、日本のすべての社会、政治、経済におけるシステムが変容し始め、これがその後の日本とアジアの変化を規定した。
瀬口氏が強調するのは、明治政府は日本の明確な「ビジョン」を立ち上げ、そのビジョンは国家全体が受け入れ、ひたすら追求したことだ。そのビジョンとは、軍事力、経済力も含む全ての点において欧米に「キャッチアップ」することだった。この目的を達成するために最優先すべきは教育のレベルと質を上げ、政治、経済、社会のシステムを近代化することだった。
瀬口氏は、日本が第2次世界大戦に敗北し復興したのちも、基本的に明治時代の「ビジョン」を堅持し、1980年代にようやく欧米に「キャッチアップ」したという理解だ。しかし、このように1世紀もの永きにわたる追求に成功しながら、日本の指導者たち、そして日本社会全体は、それ以降、日本をさらに推進し、導き、喚起する新しい「ビジョン」を何ら持たなかった。
日本は「バブル経済」の崩壊によって1990年代および2000年代に苦しんだ。しかしより根幹となる問題は、新たな国家目標と方向性の欠如だった。
なぜこのようなことが起きたのか?一般的に国家目標とは政治的指導者が形にして、官僚はその目標達成のための戦略とプログラムを形成するものだ。経済分野においては私企業が決定的な役割を果たす。
瀬口氏の見解によると、1980年代に入り、新たな国家目標を立てる必要が出たときに、日本の政治家たちは100年以上もそうした目標設定の必要がなかったため、自分たちにはその能力がないと考えたのだ。
日本の政治家たちは国家目標を変えることなく、エリート官僚に政策形成とその実施を任せ、そのためにどうしても前例と継続性という観点から思考・行動する、すなわちいかなる根本的な変革にも抗するようにし続けてきたのだ。
では、今日の日本は何を目標にすべきだろうか?瀬口氏の答えは、明確に先進国として、日本が平和な世界秩序と世界の経済発展を構築するために他の先進諸国と協力すべきだという。日本は他国の役割を支援するのではなく、はっきりと日本の自立した役割を果たすべきだというのだ。
この点が問題だ。第一に、日本は希望する世界秩序といったもののビジョン、すなわち世界秩序に関する明確に日本によるコンセプトを描かねばならず、これに即して日本は自国に関するビジョンを持たねばならない。
歴史と日本人の心理がこれを難しくしている。第2次世界大戦から復興して以来、日本は経済および国防についてはアメリカに依存してきた。この依存が経済面での「奇跡」を生み出したがために、日本の自律性は弱められてしまった。
日本の政治家の責務は世界と日本の自律的なビジョンの形成であるが、ほとんどの政治家がそのための努力を放棄してしまった。彼らはむしろ外交および安全保障政策においてもっぱらアメリカに依存し続け、一方、競争する世界市場と足並みをそろえずに島国根性的な経済政策を選んだ。
日本の政治家たちが訪米すると、アメリカの政治家、専門家に考えを働きかけることはほとんどなく、アメリカの考え方を拝聴して、そのアイデアを日本に伝えることしかしてこなかった。
瀬口氏の考えでは、日本が過去25年間に経済再活性化を成し遂げえなかった最大の原因は国家目標の欠如だという。今年は現代世界における日本の再評価と日本の未来のための適切な「ビジョン」に着手する第一歩とすべきと唱えている。
日本にとって、世界を再整理する変化とは、経済、政治、軍事面における大国中国の急速な目覚ましい台頭である。というのも、この不吉なことは日本が比較的衰退していた時期だからでき上がったものだからだ。
瀬口氏は言う。1990年代前半、中国経済の規模は日本の約8分の1だった。2000年までにほぼ4分の1となり、2009年に日本に追いついた。そして2014年に日本の2倍に達し、2020年までには3倍になる。
ドラマチックな、世界を様変わりさせる中国の台頭は、日本で二度目の「黒船」にあたる出来事として歓迎すべきだと瀬口氏は提唱する。「赤船」という用語を使うことによって彼は日本の「第二の開国」を求め、世界、国際関係、ガバナンス、経済システムにおける日本の位置を完全に再評価するよう唱えているのだ。
経済、政治、安全保障においてアメリカに依存し続けたのでは日本が直面する新たな現実と相いれず、日本が活力と自信を取り戻し、新たな世界において適切な位置を見つけるには、これを変えねばならない。
不可欠なことは、中国、中国に影響を受けている新しい世界、そしてとくにアジア秩序と、実行可能な、相互に利益となる、ダイナミックで生産的な関係を構築することだ。
「赤船」による変化を受入れるには、日本の指導者たちの大いなる努力が必要だと瀬口氏は言う。彼が間違いなく切ない気持ちで望んでいるのは、安倍首相が5月に日本の敗戦70周年記念式典出席のためにワシントンを訪問する際に、この努力に取り組んでいる証拠を示すことだ。
不幸にも、安倍首相は瀬口氏が示すポイントを把握しているとか、ましてそのために行動を起こすといった兆候を全く示していない。日本の指導者がいずれも実行に移すまでは、われわれは不毛な方向性の欠如を甘受し続けねばならない。
<終了>

【ゴリ丸の感想】
どうなんでしょうね?
ビジョンを持つべきという点には賛同しますが、「赤船」を持ち出してきて論じるのはちょっとどうかなと思います。少なくとも、現代世界における中国の動きを日本近代史上の「黒船」になぞらえることは妥当ではないように思います。確かに現代の国際政治、経済、防衛等々を語る上で中国の存在を無視することはできません。ですが、どうもしっくり来ないんですよ、瀬口氏の議論、それを全面的に是として紹介しているハーナー氏の論説には。
中国の急速な台頭を念頭に置いて、これを日本のビジョン策定のきっかけとすべきと読み取れる論調にはちょっと無理があるのではないかなという気がします。
明治維新以来の歴史認識において、欧米へ「キャッチアップ」して以後、日本政治にそれ以後のビジョンが欠けていた、米国依存一辺倒だった、継続性と前例だけですごしてきたという点ではうなずけるのですが・・・
また、前半で「彼が言葉にしなかった点」をいくつか明記していますが、これが瀬口氏の本心なのか、瀬口氏の論説を全部読んでいるわけでもないので、ちょっとわかりません。勝手にハーナー氏の持論に置き換えられているような気もします。
彼はほかの論説でも同様のことを書いていますので。
この論説を読んだだけでこれ以上のコメントは控えますが、やや考えさせられる議論のように思います。
~この稿おわり~

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