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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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ピケティ みんなで読めば怖くない?

みんなでピケティ、ピケティと騒いでいます。その中身をちょっと見てみると、ピケティ称賛論と反ピケティ論(または、ピケティ欠陥論、とでも申しましょうか・・・)に大別されます。
興味深いのは、今回のピケティの『21世紀の資本』騒動においては、経済学者、エコノミスト、アナリストなどいわゆる専門家のみならず、自称ジャーナリストや評論家(「経済評論家」ではない!)の皆さんも、ワイドショーコメンテーターも揃って論じているところでしょう。解説書だけでもかなりな数が出版されています。こうした傾向は、原書も訳書も分厚いので自分で読む気はなく、したがって解説書や書評を読んで、あたかも自分で読んだかのように論じる輩が多いから見られるものなんでしょうねえ。これって万国共通かなあ・・・
いずれにしろ、若干なりとも親ピケティないしピケティ称賛論に同意または共感できる部分があるとすれば、日本を含む先進諸国において経済格差が拡大しているということです。感覚でしかなくて申し訳ないのですが、多分日本よりも欧米の方がもっと格差が大きいでしょう。2011年にアメリカで見られたデモでは、「富の99%を1%の人々が占有している」ことに対する抗議のプラカードが見られました。デモ参加者にはこの論がもっともだと思われているということです。
では、ホントに産業革命以来、経済格差は拡大しているのでしょうか? そうだとして、これは先進諸国に共通した傾向なのでしょうか? 言い換えると、ピケティのデータ分析は正しいのでしょうか?
そんな疑問の記事を見つけましたのでご紹介します。
"Japan May Be Exception to Piketty’s Thesis" 「日本はピケティ理論の例外の可能性」
これ、すでにあちこちで訳されています。もちろんWSJ日本版でも。まあ、というわけで、ご参考までにゴリ丸の翻訳をどうぞってところです。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
トマ・ピケティは1月下旬に来日し、持てるものと持たざるものの格差拡大は動かしがたいというメッセージを満席の聴衆をに披瀝した。
だが、最近の調査は、日本が彼の有名な理論を証明するどころか、むしろ例外だと示唆している。
1990年代初頭から、日本の所得不平等度(上位1%層の所得が全所得に占める割合)は徐々に上昇してきたのち、ピケティ氏ら研究者が30カ国の傾向をまとめた「世界最高所得データベース」によると、近年は横ばい、さらには低下しているもようだ。
日本に関する新しいデータはまだ公表されていないが、ウォール・ストリート・ジャーナルがピケティ氏の共同研究者から入手した。それによると、上位1%層の所得(実質キャピタルゲインを除く)が国民所得に占める割合は2008年に9.5%に達した後、入手できる最新の数字である2012年の9%まで、4年間漸減している。
日本の傾向は米国と対照的だ。米国の上位1%層の所得が全所得に占める割合は、入手できる最新の数字の2013年が17.5%で、その4年前の16.7%から上昇している。
「所得不均衡を招く要因が日本と米国では大きく違う」ピケティ氏がまとめたプロジェクトに日本のデータを提供して協力した一橋大学の森口千晶教授が指摘する。「米国ではエグゼクティブの報酬が桁外れに多くなっている」が、日本にそうした実態は見られないという。
ピケティ氏は、日本では1990年代初頭の所得不平等度(7%)を「2012年の数値が大幅に上回っている」とメールでのやりとりで指摘した。「日本で上位層の所得割合が2009年から横ばい、ないし若干下降しているのは景気後退が原因ではないか」と説明している。高所得層の所得は、景気低迷期により大きく落ち込む傾向があるからだ。
ピケティ氏の著書『21世紀の資本』は、昨年末に訳書が出版されて以来、日本でベストセラーだ。だが、データによれば日本では過去四半世紀で経済格差はわずかしか拡大していない。
「日本は特にエグゼクティブの報酬が会社規定や年功序列でかなり抑制されている国なので、一般的に税引前所得の格差が小さい」とカリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ教授は指摘する。同教授はピケティ氏と共同研究論文を執筆しており、森口教授とは日本の傾向について共同研究している。
米労働総同盟・産業別労働組合会議(AFL-CIO)の調査によると、米国では最高経営責任者(CEO)の平均報酬が一般労働者の354倍と世界最高だが、日本では67倍と世界最低の国のひとつだ。
日本における所得格差の拡大について、米国同様に高所得層がさらに裕福になったからではなく、多くの労働者がより低賃金の臨時雇用にとどまっているためだと一橋大学の森口教授は言う。賞与や定期昇給がある伝統的な終身雇用の日本人は減少しているのだ。
森口女史は、「正規雇用ならばそれでよいが、そうでない場合、賃金は大幅に低下する」と言う。また、限られた正規雇用枠に高齢の労働者がとどまっているため、世代間でも格差は広がっていると指摘した。
同女史は、日本の問題は所得格差が大きすぎることではなく小さすぎることだろうと示唆している。彼女は、より高い報酬を求めてアメリカに渡る発明家や野球選手を例に挙げて、日本には「頑張って画期的な成果を挙げる才能ある人々に対するインセンティブがほとんどない」と言う。2012年には、日本の上位1%の平均所得は当時の為替レートで約24万ドルだが、これに対して米国では約100万ドルだった。
世界最高所得データベースは賃金格差しか測定しておらず、富の格差は対象外だ。富(株式や不動産などの資産)に関する格差の測定は所得よりも難しい。ピケティ氏は東京で行った講演で、日本の全ての富、つまり資本の価値は国民所得の約6倍で、米国の4倍を上回り、富裕国で最も高い倍率のひとつだと語った。同氏はこれが日本の経済的不平等を拡大させる可能性があると示唆した。その理由として、資本価値は経済よりも成長が速い傾向があること、日本のように人口が減少すると相続される富がより大きくなりがちであることを挙げた。
しかし、日本の富が他国よりも均等に分配されていると見られる節もある。都内に拠点を置くアーカス・リサーチのアナリスト、ピーター・タスカは日本経済新聞に寄せたコラムで、「国際水準からすれば日本の富の不平等度は低い」と述べ、日本の上位10%が保有する富は、「調査対象の48カ国の中で2番目に低かった」とする研究および「10億ドル以上の資産を持つ人の数は、日本全体よりもアンカラ(訳注:トルコの首都)の方が多い」と結論付けた研究に言及している。
今日の日本が抱える大きな問題は、アベノミクスの下で経済的不平等に起きていることだ。入手可能なデータは第2次安倍内閣がスタートした2012年末までしかない。この政権下で株価は倍になったが、物価上昇の影響を除いた実質賃金が下がったことは、格差が再び拡大しているのかも知れないことを示唆している。
「経済成長の押し上げに貢献している限りにおいて、アベノミクスは上位所得層にとっては良い政策になると思われる」とカリフォルニア大学バークレー校のサエズ教授は語った。
しかし、これは必ずしも日本経済、あるいは日本の中間層にとって悪いわけではないとサエズ教授は続けた。ピケティ氏は格差が大きすぎると経済成長が損なわれると主張しているが、サエズ氏は繁栄の回復により一層注力すべきだと語った。「格差による影響は、経済成長を取り戻すことが最優先の問題であるのに比べれば2番目の課題だ」と述べた。
<終了>

【ゴリ丸の感想】
正直に告白しますと、まだピケティを読んでいません。研究者、専門家でない限り、700ページを超える(!)専門書を読みこなすまで時間を割く決心と度胸はなかなかあるものではありません。(と言い訳しておきます)
さて、本記事の論点は、富の分配について、日本は欧米先進諸国とは少々異なる傾向を示していること、そこには景気動向以外の要素が影響している可能性があること、と言えましょう。さらに、ピケティが用いているデータにはアベノミクスが始まって以降の状況は反映されてません。
なあに、ピケティを金科玉条の如く崇め奉る必要は毛頭ないと考えます。一つの見解として、それも2012年までのデータを使うと、このように言うことが可能、といったことではないでしょうか?
変化がますます急速になっていく現代社会において、2年前までのデータで説明・解決できることは限られているのではないでしょうか、と思ってしまいます。
また、他の論説にも見られますが、アベノミクス批判のためにピケティを持ち出すのはいかがなものかと思います。そもそもの研究の目的が歪められると思います。ピケティはそのようなことを目的にはしていません。
それに、「ピケティだって◯◯と書いているではないか!」といった政治的主張をしてしまう、誤った手法は、われわれはマルクスでいやというほど経験済みではないですか。
~この稿おわり~

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