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鋭読 ~英独のニュースから世界を読む~

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メルケル首相の礼節をわきまえた批判

数日前までドイツのメルケル首相が来日していました。
EUの大国ドイツを10年間にわたって治めるアンゲラ・メルケル首相は、今やマーガレット・サッチャーに次ぐ「鉄の女」と呼んでも差し支えないでしょう。
原発を使わないと宣言したドイツ。第2次世界大戦の戦争責任に正面から向き合い、でき得る限りの謝罪に躊躇しないドイツ。いずれの様相をとっても、日本の対極にあると思います。
どちらが正しいのかという議論は二分すると思いますが、ドイツが国家としての姿勢を明確に打ち出し、それによって周辺諸国の理解をしっかりと得ていることは間違いありません。それができていないのが日本です。結局何を主張したいのか非常にわかりにくい「霞ヶ関言語」の原稿を棒読みするだけで、(自民党にしろ民主党にしろ)本質を何も訴えない政治家の旧態依然とした姿勢がこうした結果を招いているのではないでしょうか?
その証左となるできごとがメルケル首相の訪日に際して起きました。
『ズート・ドイチェ・ツァイトゥング』(南ドイツ新聞)電子版から "Merkel versucht es mit höflicher Kritik" 「メルケル首相 礼節に富んだ批判を試みる」をご紹介します。

(注:リンク、トラックバック、引用は出典を明記した場合に限りフリーです。出典を明記せず、または管理人の承諾なく一部ないし全部を転載することは、これを禁じます。コメントから連絡ください)

<開始>
・日本とドイツは通常は協調しているものだが、メルケル首相の訪日においては批判的テーマも出された。
・福島の事故に関わらず日本は原子力エネルギーを放棄する意思がなく、戦争犯罪の罪を無視している。
・メルケル首相はいずれをも批判したが、間接的に、かつ非常に礼節を尽くした仕方だった。

首相在任10年になるアンゲラ・メルケル首相は外国訪問を何度も経験しているが、このような形の挨拶を受けたのはたぶん初めてだった。「おはようございます、首相」。小柄な男性があいさつした。彼はアシモという名前で、普通の人間と同じことがたくさんできるという。そしてアシモはそれを証明し始めた。彼は部屋を歩き回り、サッカーボールを蹴ってみせ、うれしそうに跳んだり走ったりしてみせた。メルケル首相は喜んだ。アシモは人間ではなく、人型ロボットだからだ。
メルケル首相は東京に到着したばかりで、最初の予定は未来科学館の訪問だった。そしてアシモのおかげでテクノロジー好きな首相には、訪問のしがいがあった。ロボットが首相にお別れするときに、首相は彼に近づいて手を差し出した。しかし、そもそもアシモは握手ができないのだ。アシモは呆然とたたずむだけだった。アシモがメルケル首相の意図を理解できないのは明らかだった。
メルケル首相の意図が理解されなかったのは、この日、これ一回きりのことではなかった。

メルケル首相は批判せず、ありのままを述べた
メルケル首相の訪日の目的は、バイエルン州エルマウで開催予定のG7の準備だった。ドイツは、7大先進諸国の中で議長国を務める。日独関係は本質的にはいたって良好だ。ロシア、ウクライナ、シリアのいずれを巡る問題であっても両国の足並みは揃っている。それでも首相は今回の訪日にあたり、東京ではあまり受けが良くないテーマも用意していた。二つの記念日を巡る問題だ。
この水曜日で福島の悲劇から丸4年だ。今回の訪日にあたり、エネルギー政策について触れないわけにはいかない。安倍晋三首相は、福島で起きた最大規模の原子力発電所事故にもかかわらず、原発の再稼働を宣言しているが、それはドイツから見ると誤りに思われる。メルケル首相は、他国に向けて表立った助言をするとしばしば意に反した結果に終わることをわきまえている。したがって日本への批判は避け、その代わりにドイツが自らの選択を正しいと考えている理由を述べるにとどめることとした。
日本の大手紙である朝日新聞で行なわれた講演で、メルケル首相は原子力支持者から反対者へと転向した自らの経緯について語った。そうすることで、関心を喚起し、結果的に説得できれば、と考えたからだ。
しかし、メルケル首相が強い印象を与えることはなかった。その日の夕刻に行われた共同記者会見において、安倍首相はメルケル首相の言葉に冷淡にも触れなかった。「日本は福島以前にはエネルギーの3分の1を原子力で得ていた」と述べ、将来においても原子力発電を廃止することはあり得ないと表明した。
さらに明白だったのは、もう一つのテーマについて安倍首相の理解が欠けていたことだ。今年は第2次世界大戦終結70周年だ。日本は近隣諸国に惨劇をもたらしたが、ドイツと異なり、今日にいたるまでその責任に正面から向き合うことがなかった。保守右派の安倍首相は、戦争犯罪を相対化しようとさえしている。したがって現政権はリベラルな朝日新聞にも目を付けている。
安倍内閣は、「慰安婦」を巡って朝日新聞が昨年おかした誤報道を利用して、戦時下で日本に売春を強要された女性たちの悲劇を根本から疑問視しようとしている。こうした背景を前にして、メルケル首相は今回の訪日に際し、敢えて朝日新聞での講演にこだわるという明確な意図を持っていた。

天皇との会談の方が成果あり
月曜日、メルケル首相は日本政府と直に渡り合うようなことはしなかった。そうはせずに、メルケル首相は自らの経験を語った。ドイツは第2次世界大戦開戦およびホロコーストに対して責任を負っているにもかかわらず、国際社会に再び仲間入りを許されたが、それは自らの責任を認めたからだ、とメルケルは語った。過去の検証が「和解を可能にした条件の一つ」だが、ドイツは近隣諸国が和解の手を差し延べてくれたという幸運にも恵まれたというのだ。
日本がこうしたオブラートにくるまれた間接的な批判をどのようにかわすのかを示していたのは、公共放送で右派のNHKのメルケル首相訪問の扱いである。講演会場がかの悪評高き朝日新聞であったということをNHKの報道は伏せた。そしてメルケル首相のスピーチの一部を抜粋したに過ぎず、そこでは「ドイツが和解への意志を持った近隣諸国に恵まれたことは幸運だった」という表現だけが紹介された。彼女の言葉の中で「自らの責任を引き受けなければならない」という部分はカットされていた。安倍首相もまた、共同記者会見においてメルケル首相のスピーチに触れなかった。
安倍首相とアシモが、メルケル首相の訪日を複雑にしたせいか、天皇陛下との会談はなおのこと成果あるものだった。天皇陛下は長年にわたり魚類や海洋の研究に高いご関心を持たれている。そのような方とG7の重要なテーマである温暖化問題や海洋保全の問題について会談するのは素晴らしいことだ。会談は予定時間を超過した、と連邦首相府は後に誇らしく報じた。メルケル首相は、タンホイザーのワーグナー自身によるピアノ用編曲譜の希少な初版を陛下に贈呈した。天皇陛下におかれてはお気に召したことだろう。ご自身が熱心なチェリストでありクラシック音楽愛好家であられるからだ。
<終了>

【ゴリ丸の感想】
メルケル首相の深謀遠慮も安倍晋三お坊ちゃまには通じなかった、ということですね。
EUを代表する存在であるドイツとしては、アジア諸国、とりわけ中国、韓国と日本の関係がこじれるのは何としても避けたいのです。揉めるのは中東で十分というのが欧州諸国の本音です。そのためには、第2次世界大戦の敗戦国、戦争犯罪国として認めるべきことを認め、正面切って謝罪すれば、ドイツのように近隣諸国からきちんと手を差し延ばしてもらい、友好関係を築くことができる、と言いたいのです。日本のように、ケンカに負けて「謝るけど、あっちもいけないんだ」って、それじゃあ子どものケンカじゃあるまいし・・・
なお、ジャーナリズムが本質を語らない政治家におもねて、事実を報道しない、自粛する=政治家の力に怯えてジャーナリズムの真髄を放棄している状態が今の日本だと思います。ゴリ丸が言っているのは、イデオロギーや思想の問題ではなく(それについては正々堂々と議論すればいいんですよ)、民主主義国家としてあるべき姿を今の日本が失っているのではないかと言いたいのです。
~この稿おわり~

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